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「あまり近付かないでください…。Aさんの匂いが…、たまらない」
無惨の赤みを帯びた頬と熱くAを見つめる潤んだ瞳は、情欲の色を滲ませるときのそれとよく似ていて、Aはそっと、無惨の口元に己の手首を近付ける。
「…っ、離れてください」
そう言ってAから離れようとする無惨の腕を掴んで、Aは無惨の唇に手首を押し付ける。
「飲んでください」
無言で何度も首を振る無惨に、「どんな苦痛でも享受すると、言いましたよね」とAは無理やり無惨の唇をこじ開ける。
「…っ、」
Aの指が口内に入ってきたことでもう我慢が出来なかったのか、無惨はそのままAの指先に歯をたてて吸い付くようにして血を飲んでいく。
「〜っ、」
もちろんそんな少量の血だけで足りるはずもなく、もっともっとと求める身体のせいで自然と目がいくAの首筋に、無惨は思わず震えるほどの激情を感じる。
「っ、」
慌ててAの指を離した無惨は、油断すればAを喰い殺してしまうであろう恐怖に、今度は違う意味で身体を震わせる。
「…ふふ」
何が面白いのか、突然笑い声を漏らしたAに顔を上げる余裕もなく、無惨はただ両手を握りしめることしかできなくて、ひたすら荒い呼吸を繰り返す。
「…本当に、私のことが好きなんですね」
「…っ、なにをいまさら、」
必死の思いで出された声も、無惨の苦痛を示すようにか細く震えていて、Aは今度は泣きそうになるのを誤魔化すように瞬きをしてみせる。
「私…、結局貴方は…苦痛から逃げ出すんじゃないかって、疑ってたんです」
ごめんなさい、と無惨に負けず劣らず震える声で言ったAは、ゆっくりと無惨に近付いて、色が変わるほどきつく握りしめられた無惨の手を優しく握りこむ。
「…辛かったですよね。無惨さんは言葉通り、全てを差し出して、私に誠意をみせてくれていたのに…」
Aの言葉に弱々しく首を横に振る無惨は、「Aさんの、苦痛にくらべたら…」とAに身体を預けるようにして身を寄せる。
「布団をご用意しましょうか。起きているのも辛いでしょう」
「…しばらく、このまま…」
それきり言葉を途切らせた無惨に、Aは無惨の望む通り、しばらくその背中を優しく撫でながら無惨を抱きしめ続けた。
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チーズ(プロフ) - 美鬼さん» コメントありがとうございます!無惨様かっこいいですよね!!私も好きすぎて、自然と無惨様の作品が増えてしまいました(笑)こちらこそ最後まで読んでいただきありがとうございました!これからも無惨様どんどん書いていきたいと思います(^^) (2021年2月10日 12時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
美鬼 - ついこの間鬼滅にはまり、見た中の最後に出てきた、無惨様のかっこよさに惚れてしまって、小説を探してたんですが、どれも更新されずに終わったものばかりで…、最後まで書いてくださって本当にありがとうございます!無惨様にこれからもドキドキしそうです…、 (2021年2月10日 0時) (レス) id: 2739ea30a5 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - manayattiさん» コメントありがとうございます!そんな風に言っていただけるなんて、嬉しすぎます(;ω;)これからも無惨様書きます!!よろしくお願いします(^^) (2020年12月26日 22時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
manayatti(プロフ) - あの、、、大好きです、、、ほんとに無惨様の作品が少なくて無惨様の作品を作って頂けるのはほんとに嬉しいです、、今まで色々な夢小説を見てきましたがチーズさんの作品が1番好きです。恐縮ですがこれからも無惨様の作品を作って頂けると嬉しいなぁと思っております (2020年12月26日 15時) (レス) id: 1471b15ec3 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - マナさん» ありがとうございますー!!強くなっていくのでしょうか!温かい目で見守っていただけたらと思います(^^) (2020年8月7日 11時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズ | 作成日時:2020年7月28日 19時