15 ページ15
・
昨夜の話の流れでもう身を隠す必要性を感じなくなったからか、見慣れた青年の姿でAの目の前に現れた無惨は、突然Aの頭に鼻を寄せたかと思うと、微かに眉をひそめる。
「…、今日、誰かと触れ合いましたか?」
「触れ合う…?…いえ、とくに」
心当たりのなかったAはきょとんとした表情でそう言って、「どうしてですか?」と無惨に目を向ける。
「いえ。ただ少し、匂ったような気がしたので」
確かめるようにAの髪の毛に触れた無惨に、今朝のお館様とのことを思い出したAは、「ああ!…そういえば、お館様に頭を撫でていただきました」と笑みをみせる。
「…それは…、男、ですよね?」
「え?…でも、お館様は既婚者ですよ?」
「どんな男であろうと、決して身体に触れさせてはいけません」
そう言って匂いをかき消したいのか、Aの頭をわしゃわしゃと乱した無惨は、そのあと丁寧に手ぐしで髪を整えていく。
「ええ…、不意打ちは、避けられないじゃないですか…」
「手が届く距離に近付かなければいいことです」
少し無理がある無惨の言葉に、「気にしすぎですよ」と可笑しそうに笑うA。
「これでも足りないくらいです。本当はAさんを、誰の目にも触れないところに閉じ込めて、私のことしか考えられないようにしてしまいたい」
「…えっ、」
「ふふ、大丈夫ですよ。思うだけに留めておきますから」
優しく微笑む無惨の表情がよりその言葉の現実味をAに持たせて、思わず引きつる表情を、Aは無理やり笑顔に作り変える。
「…ぜひ、思うだけに留めておいてください…」
「はい」
穏やかな無惨の笑みに、Aが安らぎやときめき以外の気持ちを感じたのは、初めてのことだった。
***
この夢主の反応にこそ意味があって、弍では結局鬼になり、盲目的に無惨様を想っていた夢主が、
参では鬼にならない=理性的な部分も残っていて、夢主が無惨様の全てを受け入れられるわけではない、というのを表しているつもりです!
569人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
チーズ(プロフ) - 美鬼さん» コメントありがとうございます!無惨様かっこいいですよね!!私も好きすぎて、自然と無惨様の作品が増えてしまいました(笑)こちらこそ最後まで読んでいただきありがとうございました!これからも無惨様どんどん書いていきたいと思います(^^) (2021年2月10日 12時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
美鬼 - ついこの間鬼滅にはまり、見た中の最後に出てきた、無惨様のかっこよさに惚れてしまって、小説を探してたんですが、どれも更新されずに終わったものばかりで…、最後まで書いてくださって本当にありがとうございます!無惨様にこれからもドキドキしそうです…、 (2021年2月10日 0時) (レス) id: 2739ea30a5 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - manayattiさん» コメントありがとうございます!そんな風に言っていただけるなんて、嬉しすぎます(;ω;)これからも無惨様書きます!!よろしくお願いします(^^) (2020年12月26日 22時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
manayatti(プロフ) - あの、、、大好きです、、、ほんとに無惨様の作品が少なくて無惨様の作品を作って頂けるのはほんとに嬉しいです、、今まで色々な夢小説を見てきましたがチーズさんの作品が1番好きです。恐縮ですがこれからも無惨様の作品を作って頂けると嬉しいなぁと思っております (2020年12月26日 15時) (レス) id: 1471b15ec3 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - マナさん» ありがとうございますー!!強くなっていくのでしょうか!温かい目で見守っていただけたらと思います(^^) (2020年8月7日 11時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:チーズ | 作成日時:2020年7月28日 19時