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「ご馳走さまでした。…姉上、片付けは僕がやるので、お先にお風呂へどうぞ」
「え、でも…」
「晩酌の準備も僕が整えておきますから」
夕食後、そう言って戸惑うAをぐいぐいと押す千寿郎に、その父が「晩酌?」と不思議そうな声を出す。
「はい。姉上がご友人から、兄上と一緒にと頂いたお酒がありまして、今日はそれを姉上と兄上は共に飲むのです」
「そうなのか?聞いてないぞ?」
千寿郎の言葉に、驚いたような声を出したのは当事者であるはずの杏寿郎。
「ご、ごめんなさい。洗濯に夢中になって、言い忘れてました…」
「そうだったか!友人というのは、胡蝶たちか?」
「はい。とても美味しいお酒だそうで」
Aの言葉に、どことなく落ち着かなそうにしている父に、「父上は駄目ですよ」と千寿郎が先手をうって言葉をかける。
「余ったら父上にも差し上げましょう!」
「兄上、駄目です!兄上と姉上に、と頂いたものなのですから!」
お酒を贈られた意味を知っている千寿郎はそう慌てて兄に声をかけて、「姉上はお風呂へどうぞ」とAに笑顔を見せる。
ここは任せてください、という意味なのだろうと捉えたAは、下手に話を振られても困るのもあって、千寿郎の言葉に甘えて先にお風呂をいただくことにする。
「片付けまでやってもらっちゃって、悪いなぁ…」
申し訳ない気持ちとは裏腹に、これからの晩酌が楽しみな気持ちもあって、Aは無意識にいつもより念入りに身体を洗ってしまう。
「…うう、そういうことを期待しているって、はしたないことだよね…」
いくら義務だ何だのと建前を並べても、自分としては恋い慕う殿方と結婚したというのは紛れもない事実で、どうしても下心めいたものが顔を覗かせてしまう。
「恥ずかしいっ!杏寿郎さんはきっと、そういう目で私を見てないのに…」
だからお酒の力を借りるのだ!と気を取り直して早々にお風呂を出たAは、深呼吸をひとつして、髪を拭きながら台所へと向かう。
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チーズ(プロフ) - みゆさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけて嬉しいです!期待に添えるように頑張りますので、よろしくお願いしますm(__)m (2020年11月5日 18時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - よもぉぎさん» コメントありがとうございます!無限列車に乗車したんですね!私まだなんですー!煉獄さん現実に来て欲しいですよね、、更新頑張りますのでよろしくお願いします! (2020年11月5日 18時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ - 読ませていただきました!!煉獄さんがイケメン過ぎるし千寿郎は可愛くて お話が更新されるのを楽しみにしてます(*´ω`*)更新大変だと思いますが、無理せず頑張ってください☆ (2020年11月4日 8時) (レス) id: 010b0b49eb (このIDを非表示/違反報告)
よもぉぎ(プロフ) - はわぁ...素敵すぎます〜!!煉獄さんから愛されるなんて話数を積む事ににやけが増していきます!!無限列車にも乗車したんですがどれほど煉獄さんが現実にいたらと思ったんだろう。。更新頑張ってくださいー!!! (2020年11月4日 7時) (レス) id: 990295e7ae (このIDを非表示/違反報告)
チーズ(プロフ) - パプピーマン。さん» コメントありがとうございます!好きすぎるだなんて嬉しいです!口角が富士山!言い回しが上手すぎて思わずクスッと笑ってしまいました、、!!関係ないですけど、今の季節の富士山はめちゃくちゃ綺麗ですよね〜(笑)更新頑張りますのでよろしくお願いします! (2020年10月30日 11時) (レス) id: eb72564922 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:チーズ | 作成日時:2020年10月8日 14時