side - k ページ26
.
Aと初めて会ったのは、無理矢理連れて行かれた合コンだった。
同じく無理矢理連れて来られたAと端っこでちまちま食事をつまみながらお酒を飲んでるうちに、意気投合して。この子いいかもなーって思ってから、好きになるのに時間はかからなかった。
『ねえ海、今度の休みここ行こうよ』
『へえー何これ、オシャレじゃん』
『でしょ?ご飯も美味しそうだし』
『じゃあ次はそこで決まりだな』
Aは彼女として申し分ない人だった。
優しくて寛大で、よく笑う。こうやって楽しい事が好きでちょっと子供っぽいところも、一緒にいて面白い。
抱き締めると嬉しそうに顔を埋めてくるところも、キスをしたあと少し恥ずかしそうに俯く所も、とてつもなく愛おしかった。
じゃあなんで浮気したの、と言われると、明確な理由なんてなくて。本当にただの出来心というか、一瞬の気の迷い。
『……もしかして、海くん?』
『………、明日香?』
明日香は、大学の友達だった。再会したのは本当に偶然。Aと付き合って1年半くらいの時に、たまたま行った居酒屋でばったり会って、そこからたまに一緒に飲むようになった。
ある日、明日香から誘いの連絡があって。いつもの居酒屋に着いた頃、明日香は既に出来上がっていた。自分も生ビールを頼むと、少し虚ろな目をした彼女がぽつりと話し始める。
『………浮気されちゃった、』
大学時代から付き合っていた彼氏の浮気現場に遭遇した。築き上げた数年は一瞬で崩れた、と明日香は泣いていた。
『私はね、まだ好きなんだよ…』
『………』
『一瞬の気の迷い、って、言ってたの。本当ズルいよね、男の人って』
『……私達の6年って、なんだったんだろ』
.
酔い潰れた明日香は、家の場所を聞いても答えなかった。Aに罪悪感と申し訳なさを抱きながら、とりあえず自分の家に連れて行き、ソファに降ろす。
『水持ってくるから、落ち着いたら帰れよ』
『………海くん、』
その場を離れようとした俺の腕を両手で掴む。Aの手はもう少し小さかったな、なんて考えた。
『海くんはさ、いつも周りにたくさん人がいて……誰にでも優しくて、頼りになって……
………海くんは、ズルくないよね?』
.
359人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
エリンギプール(プロフ) - 続きが気になります! 大変だとは思いますが、更新待ってます! 頑張ってください (2018年12月15日 23時) (レス) id: b1e7a3c80b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:な な . | 作成日時:2018年10月10日 23時