解放されるかもしれない ページ38
『この封筒、佐倉という男から猫宮さんに渡すように言われたものです。お受け取りください。』
その茶色の封筒を開くと、札束が入っていた。恐らく50万以上の大金は入っているであろう。
キ｢こんな大金っ、｣
『慰謝料でしょう。私からも支払うように請求したんです。さすがに猫宮さんに直接会わせるのも私が嫌だったので、私が受け取らせて頂きました。』
キ｢配慮していただきありがとうございます。｣
『いいえ。…すごく出来た彼氏さんで、猫宮ちゃんにピッタリね。今回のこと、清川さんのおかげだから本当に助かりました。改めてありがとうございます。』
キ｢いえ。ではこの封筒は、Aに渡しますね。｣
『…最後に一つだけ。清川さん、猫宮さんはとても素敵な女性かつ、素敵な性格だと思う。ただ彼女は抱え込みやすと言うか…無理をしやすい人なの。今回に関しても、佐倉のことが嫌だとしても私には相談しなかった。そこからさっき言った意味が分かると思うけど、…猫宮さんの支えに、なってあげてね。』
編集長さんの言葉はとても重く、そしてしっかり受け止めるべきだと、そう思った。俺は深く頷き、封筒をバックにしまって2人で部屋を出た。
キ｢A。｣
｢…！き、…た、っくん。｣
キヨ。そう呼ぶのを躊躇ったのか、初めて下の名前で呼んでくれた。なんかよくわからんけどときめいた。
『2人とも。今日はありがとう。そして元うちの社員が本当にごめんなさい。』
｢もう謝らないでください。編集長。大丈夫ですよ。｣
俺たちは編集長に頭を下げたあと、会社を出た。帰り道、しゃるとは黙っていた。俺たちは話すことなく、一旦俺の自宅へと向かい、扉の鍵を開けた。
｢ねぇ、キヨくん…。私知っちゃったの。｣
家に入って、2人で座ると同時に彼女が口を開いた。
キ｢…うん？｣
｢少し前に私の家に来てた元カレが来るって話、してたじゃん。それ、佐倉さんも繋がってたんだって。｣
キ｢…え｣
｢警察に話をした時、佐倉さんの友人関係が悪人ばかりで…そこに元カレの写真があった。しかも犯罪まで犯して、警察が追っていたらしいの。だから…情報提供してきた。脅されてることも言った。けど、恐らく彼が刑務所から出ることは永遠にないだろうって。｣
キ｢そ、っか…そう、なんだ…｣
｢逮捕次第、私の方に連絡くれるって。私、ようやくあの人から解放されるかもしれない…｣
よかった、その喜びで俺は彼女を再び抱きしめた。
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作者名：まい | 作成日時：2020年12月12日 19時
