惚れてもおかしくないじゃん ページ27
しゃるとサイド
浴槽へと体を沈める。暖かい。それに、キヨさんが使ってる入浴剤、すごくいい匂いがする。
「…明日、顔晴れちゃうよ…」
あれだけ泣いたのはいつぶりだろうか。まるで張っていた糸が切れたかよのように、涙が止まらなかったのだ。彼は優しい人だから、抱きしめてくれた。そしてあやすように背中をさすってくれた。
「…好きに、なりそう」
その言葉がお風呂場に響き渡った。当たり前だけど、恥ずかしい。それに私が1番分かっている。彼は人気者でいて、活動自体は違うけど、表に出るような…そんな人だから。それに、あれはただ優しいだけ。
「誰にも相談せずに耐えてきたんだもん、…辛いよね」
そう言ってくれた彼の目には嘘がなかった。本当に、心の底からそう言ってくれているような…。
「だめだめっ!」
深く考えることをやめ、浴槽から体を出し、用意してもらったタオルで拭く。そしてその隣に置いてある明らかに大きなお洋服。体格差を考えれば仕方がない。
_「キヨさん、お風呂ありがとうございました」
リビングへと顔を出すと、彼はテレビを見ていたようだった。深夜のテレビって、なんだか特別感があって私は好きだ。なんだか大人って気がして。
キ「全然いいよ、俺もお風呂入ってきちゃうね」
彼が私の隣を通り過ぎる。さて、キヨさんがお風呂あがるまで何をしてよう。泊まる予定なんてなかったし、スキンケアできる物もない。しかもすっぴん。
「すっぴん…やばかったかな、」
洗面所に向かった彼は至って冷静だった。ソファへと腰掛けてテレビを見る。ふと、通知が気になってスマホを手に取った。すると、そこには彼の通知。
「動画、あげてたんだ。」
彼の動画をタップして再生する。すると、今とは比べ物にならないくらい、大きくて元気な声が聞こえてくる。再生している途中に、ふと思い出した。私、あーずーと踊るやつの振り入れもしなきゃ。
「1番は覚えてるから、1回振り返る程度で…」
私はキヨさんを待っている間、手の振り入れをした。
_キ「…その曲踊るの?」
「!キヨさん、!はい、今度踊るんです」
キヨさんの髪の毛は濡れていた。うわぁ、水も滴るいい男…みたいな?そんな感じする。
「キヨさん、髪の毛乾かさないんですか?」
キ「乾かすつもりだけどめんどくさい…笑」
「綺麗な髪、傷んじゃいますよ?…あ!今日のお礼に髪の毛乾かしてもいいですか?」
我ながら、かなりやばい人だと思った瞬間である。
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作者名:まい | 作成日時:2020年12月12日 19時