泣き疲れちゃったね、 ページ26
キヨサイド
この状況はどうすればいいのだろうか。心音が早くなっていくのが分かる。この音は彼女に伝わることはないだろうけど…。もう数時間は経つ。
なんせ、彼女は俺の胸で寝息を立てているのだから。
キ「はぁ…」
ため息をつきながらも背中をぽん、ぽんと規則正しく叩いてしまう。初めは化粧付いちゃうから、なんて言ってたけど、挙句の果てには化粧を落として泣き疲れて寝てしまっているのだから、可愛く感じる。
「キヨさんっ、助けてよっ、…!」
彼女は泣きながらそう言った。その言葉はやけに俺に重くのしかかっている。彼女の抱え込んできたものがここまで大きなものだとは思ってもいなかった…。
普通に殺人を犯せるようなやつから彼女を守らなきゃいけないのか。
そう思うと背筋が凍る感覚が訪れる。けれど、彼女のことを守りたい。その気持ちは変わらなかった。
キ「俺が、守ってみせる。…いや、守るから。」
彼女が俺に弱みを見せてくれた。彼女には俺がどう写っているのか分からないけど、ここまで過去の話をしてくれるのって、信頼してくれてるのかなぁなんて、自惚れしたくなる気持ちも分かってほしい。
「ぅんっ…」
なんとなく彼女の頭に乗せていた手を退ける。胸に顔を擦り付けるような仕草は、どこか猫に似ていた。
「ぁ…キヨさんっ、ごめんなさい…」
彼女の体温が離れていくのが分かる。
「あれっ、今何時ですかっ…!?」
壁にかかる時計に目をやると、もう日をまたいでしまっていた。夜から会っていたから仕方がないか。
キ「1時近い…」
「終電、逃しちゃった…仕方ない。歩いて帰ります」
キ「いやいや待て待て!!危ないって!!」
救っと立ち上がり、帰る支度をする彼女を必死に止める。こんな夜中に女性を歩かせる訳にはいかない。
キ「明日早めに予定あるの?」
「いえ。でも午後から仕事場に顔出しだけ…」
しゃるとちゃん、踊り手以外にも仕事してるんだ。その両立って凄いなぁって思っちゃうけど…。
キ「なら泊まっていきなよ、俺は大丈夫だし。」
「うぅ、ではお言葉に甘えて…」
キ「じゃあお風呂沸かしてくるから、待ってて」
さすがに女性用の下着とかはないけど、パジャマとして俺の服貸すか…。だいぶぶかぶかしちゃうかもな…
キ「いや、それもいいんじゃ…」
そんな考えを打ち消すように首を振る。俺は彼氏じゃない。彼氏面はだめ。自分で言ってて悲しいけど…。
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作者名:まい | 作成日時:2020年12月12日 19時