壊れたロボット ページ24
｢いや、殺されるはさすがに大袈裟かも。でもあの人の事だから、やりかねない…。｣
キ｢え、ま、待って…、｣
束縛までして、挙句の果てには脅迫…？しかも逃げてきたって、そんなドラマみたいなことを、人生で経験してきたってこと、だよな…？
キ｢それを今まで、1人で抱え込んでたの…？｣
｢ぁ、はい…。ごめんなさい、引きました…？｣
キ｢謝らないで。しゃるとちゃんは偉いね。怖い中、活動を頑張ってるんだもん。本当にいい子だよ。｣
俺が何気なくそう呟くと、彼女は静かに涙を零した。つぅ、と頬をつたってテーブルへと落ちる。
キ｢しゃ、しゃるとちゃん…！？ごめ、俺触れちゃいけないこと触れちゃった…！？｣
｢い、いえっ…なんだか、嬉しくてっ…｣
彼女の涙なんて見たことない。それを目の当たりにした俺はひたすらに焦り、なんとなく彼女の横に移動して目元をを濡らす涙を優しく指で拭った。
｢偉い、なんて言われたことないですよっ…頑張ってるってことが、私の中では当たり前で…頑張ってることを偉いなんて言ってくれた人、居なかったのに…｣
キ｢しゃるとちゃんは偉いよ。高校生の時から活動して、それが今でも続いてる。それだけ熱中できるのも凄いと思うし、頑張ってるからできることだと思う。その頑張りが伝わってるから、俺みたいなファンを惹き付けるんだよ。頑張れるって、偉いんだよ。｣
俺は子供に言い聞かせるかのように、優しくゆっくりとした口調で話しかける。彼女の涙は止まらない。
｢家庭には恵まれとるからっ、こんなこと言いたくないけど、家族は私のことを偉いなんて言ってくれたことはなかった、頑張るが当たり前やって言っとったっ…無理しても頑張らな思っとったっ、｣
俺はこの時、彼女は褒められて伸びたわけではないと感じた。ご家族には悪いけど…。この子は今まで、ここまでの頑張りを当たり前の事だと思って育ってきたんだ。こんなにも凄いことなのに。
｢ほんまはあの男の時やって頼りたかったっ、誰かに助けてほしかったっ…でも迷惑かけたくないし、1人で頑張ってきた、でももう無理かもしれんっ…｣
キ｢怖かったよね。怖かった、というよりかは、今だって怖いはず。それなのに誰にも相談せずに耐えてきたんだもん、…辛いよね。｣
｢もう嫌っ、こんな思いしたくないっ…怖い、怖いよっ…キヨさんっ、助けてよっ、…！｣
彼女は壊れたロボットのように、怖い、怖いと繰り返す。それを慰めるように彼女を抱きしめていた。
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作者名：まい | 作成日時：2020年12月12日 19時
