信頼関係 ページ18
キ｢もしもし、しゃるとちゃん…？｣
電話に出てくれたものの、一切声が聞こえなかった。不思議に思った俺は電波を確認するも異常はない。
すると突然、大きな物音が聞こえてきた。
キ｢…っ！？しゃるとちゃん！？大丈夫！？｣
『キ、ヨさん…。すみません、大丈夫です。』
声からして絶対に大丈夫なんかではない。むしろ声はさっきよりも震えていたし、消えそうな声だった。
キ｢…嘘だよ。声、震えてる…。｣
『こ、れは…違くてっ…』
必死に誤魔化そうとはしているが無駄だ。俺は異変に気づいている。
キ｢まだ1回しか会ったことないし、頼りないけど…俺はしゃるとちゃんが不安に襲われてるの嫌だよ…。｣
『キヨさん…』
信用なんて出来なくて当たり前だ。けど気になって仕方がない。首を突っ込まない方がいいのかもしれないけど、この状況では疑問に思って当然だ。
『キヨさんが言ってた、DVの悩みは…本当です。でももう別れたんです。けどしつこくて…』
キ｢その男が何かしてたの…？｣
『さっき、ドアを思いっきり叩いて帰っていきました…あと、怒鳴り声もあげてましたね…』
なんだよ、別れたってのにそこまで執着してるのか…めんどくさい元彼さんだな。
キ｢しゃるとちゃん怪我してない？｣
『あ…はい、大丈夫です、今日は家まで入り込まなかったので…』
キ｢今日は…？｣
俺がそう言うと、図星だったようで電話越しで小さな声をもらしている。
キ｢ごめん、無理に聞こうとは思わない。けど、すごく不安なんだ。しゃるとちゃんに何かあったらどうしようって…｣
『いえ、むしろ嬉しいですよ。ありがとうございます。次、お会いした時には話せそうです。』
キ｢無理しなくても大丈夫だよ？｣
『私、キヨさんなら信じたいんです。キヨさんは酷いことする人じゃないって分かってるから…。それに、本当は辛いんです。誰にも、話せなくて…』
キ｢近いうちに会おう。早く話した方が楽になれるから。今度は俺の家においで？｣
『いいんですか…？お邪魔して…』
申し訳なさそうな声が返ってくる。そこも彼女らしいけど、俺が家に呼ぶのはそのDV男に万が一の邪魔をされたくないからだ。
キ｢うん。スケジュールはあわせるから、しゃるとちゃんが話せそうなタイミングでいいよ。｣
『ありがとうございます。後日予定を送りますね。』
電話の最後にはしゃるとちゃんの声色はいつも通りになっていた。けどまさかDVで悩んでいるとは…。彼女のことを救いたい。
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作者名：まい | 作成日時：2020年12月12日 19時
