片恋シンドローム２〈 Ren.M 〉 (ページ49)

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無事に映画の撮影を終えて東京に帰ってきた。と言っても日中も撮影していたからもう夜の23時を回っていた。蓮くんには会いたいけど正直疲れて体がへとへとで、会いに行く元気は残っていなかった。明日会いに行こうかなぁって思ってた時に、着信音が鳴った。スマホの画面を見ると蓮くんの名前がある。

「もしもし、蓮くん？」

『お疲れ。もうこっち帰ってきた？』

「うん、今家まで送ってもらってるとこだよ」

『おー、じゃあちょうどよかった。俺今Aのマンションのエントランスにいるんだよね』

「……え、今？」

『そう、今』

今日はもう会えないかもって思ってたのに蓮くんから来てくれたんだ。蓮くんだって忙しくて疲れてるはずなのに、いつもわたしとの時間も大切にしてくれる。どうしよう、早く会いたい。

「ねえ香坂さん急いで！あと10秒で着きたい！」

「なんでそんなどう考えても物理的に無理なこと言うのあなたは……なるべく早く着けるように頑張るわ」

『そんな急かさなくても俺待てるよ(笑)』

「だめ！わたしが待てないの！」

『ふはっ、かわいいね』

マネージャーさんはわたしが誰と通話してるのかを察してくれたらしく、すこしだけ車のスピードを上げてくれた。さすがに10秒は無理だったけど、3分くらいで到着できた。香坂さんに挨拶だけして急いで車を降りて、蓮くんの元まで走った。

「蓮くんっ」

「ちょっとだけ転ばないかひやひやしちゃった」

「転ばないよー！来てくれてありがとう」

「ううん、俺が会いたかっただけだし」

なんて蓮くんは言ってくれてるけど多分わたしが疲れてると思ってわざわざ来てくれたんだろうな。わたしの部屋に向かいながら、「わたしも会いたかった」って伝えると蓮くんは嬉しそうにへにゃっと笑った。

「板垣くんとキスシーン撮った？」

「あ、えっと……昨日撮りました……」

「そうだよなー……演技だからAも何とも思ってないだろうけどちょっと嫉妬する」

玄関に入ってからすこしトーンの落ちた声でそう話す蓮くん。なんだか見ていられなくて、一瞬だけ躊躇ったけど背伸びして彼の唇にキスをした。

「……え」

「わたしには蓮くんだけだよ」

そう言ってから恥ずかしくなっちゃって、逃げるようにリビングに1人で向かった。後ろから「ねぇ待って、もっかいして！」って聞こえるけどスルーした。ごめんね蓮くん。でもあの言葉はほんとに嘘じゃないよ。