片恋シンドローム２〈 Ren.M 〉 (ページ16)

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◎ 片想い同士のマウント合戦ページ16

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メイク室にはぴりぴりとした空気が流れていた。主に俺と西宮さん(久しぶり)のせいで。
俺と西宮さんと言えば、Aに好意を寄せている因縁のライバル。こうして仕事で一緒になる度にお互い顔には出さずとも睨み合っている。

「……最近Aさんといい感じらしいじゃないですか」

「そうなんだよね、ごめんね西宮さん」

「あーキレそうです普通に……Aさんにその腹黒いとこバレて嫌われたらいいのに」

なんて言いながら結構強い力でぺちぺちと化粧水を頬につけられる。俺一応アイドルなんだけどな。

「あ、そういえば最近Aさんの家に泊まった話目黒さんにしましたっけ？」

「は？」

「してませんでしたっけ。Aさんちのしぴちゃん私にすっごい懐いてくれたんですよ」

いつの間にそこまで仲良くなってんの？いやAは確かに誰に対しても距離の詰め方が上手すぎてすぐに仲良くなれるようなタイプではあるけど。Aの家に泊まった？俺ですら数え切れるくらいしか泊まったことないのに？

「西宮さんもなかなかいい性格してるよね」

「目黒さんにだけは言われたくないんですけど」

鏡越しにバチバチと火花を散らしているとメイク室の外から軽快な足音がする。足音だけでわかる。これは絶対Aだ。

「おはよ～ございますっ！」

当たった。俺すごくない？俺も西宮さんもさっきまで険悪な空気だったのにAが来た途端分かりやすく表情が和やかになった。

「あ！今日帆乃ちゃんが蓮くんのメイクしてるんだねぇ」

「はい、Aさんのメイク出来なくて残念です」

「ふふ、また今度おねがいします～！帆乃ちゃんにメイクしてもらうの大好きだから！」

と言いながらもう1人のメイクさんの元へ行ったA。Aってほんと無意識でああいうこと言えちゃうから罪深いと思う。多分重罪。なんか西宮さん苦しそうだし。

「あの……今帆乃ちゃん大好きって聞こえたんですけど……」

「そんなこと一言も言ってないよ。西宮さんにしてもらうメイクが、大好きって言ってただけで」

「Aさんって毎日かわいい……」

「それは分かる」

Aに聞こえるか聞こえないかくらいの声量で話してる西宮さん。Aのことが好きなだけあってAに関する価値観だけは妙に俺と合ってしまう。
でもやっぱりこの人には負けたくないから頑張ろう、って思えるからわりといいライバル関係を築けている気がする。多分。