片恋シンドローム〈 Ren.M 〉 (ページ36)

今日:32 hit、昨日:14 hit、合計:309,956 hit

◎ はじまりの日ページ36

.

ジャニーズ唯一の女の子。その肩書きの重さとプレッシャーに押し潰されそうになり始めたのはいつからだったのか、もうあんまり覚えていない。
11歳の時からジャニーズに入所して、しばらくは表舞台に立つこともなくひっそりとレッスンを重ねていた。初めてテレビに出たのはドラマの端役としてだった。それでも所属事務所は公表することなく、ちょくちょく子役の仕事をいただいて活動していた。

本当はみんなみたいに歌って踊って、かっこいいアイドルになりたかった。でもわたしが入ったグループはことごとく表に出ないまま数ヶ月以内に解散して、あいつがグループに入ってきたら終わりだ、絶対に売れないと噂されて居場所なんてどこにもなかった。
演技の仕事は楽しいし歌もダンスも大好きだけどもうやめようかな、なんて考えていた時だった。滝沢くんから声がかかったのは。

「失礼します……」

「ああ、東雲。いきなり呼び出してごめんな」

「いえ、……え」

顔を俯かせたまま会議室に入り、顔を上げるとそこには滝沢くんの他に目黒くんとラウールくんと康二くんがいた。月並みの表現しか出来ないけど3人ともすごい人で、なんでここにって真っ先に思った。
戸惑いながらも椅子に腰を下ろすと滝沢くんが口を開いた。

「率直に言うと、Snow Manの新メンバーとして加入して活動しませんかっていう話なんだけど」

その言葉に4人とも、たぶん声を漏らしていた気がする。

「6人にはもう承諾は取ってある。あとは君たちの返事だけなんだ」

もちろんだけど4人の中ではい入ります、なんてすぐに返事をする人はいなかった。みんな考えさせてくださいって言ってその日は解散になったけれど、わたしの中では加入する意思なんてほぼなかった。
Snow Manはみんなデビューに向けてひたむきに頑張っていることを知っていたし、そんな中でわたしなんかが入ったらデビューが遠のくどころか一生デビュー出来なくなってしまう。そう思ったから。

ある日、事務所内にある自販機で買ったココアを飲みながらどうやって辞退することを伝えようかな、とぼんやり考えている時だった。わたしを見かけた目黒くんが声をかけに来てくれた。

「ココア、好きなの？」

それが第一声だった。