片恋シンドローム〈 Ren.M 〉 (ページ33)

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なんなんだこの人。Aがせっかく話しかけてくれたのに遮るようにして俺に話しかけてきた。スルーしてAに話しかけようとしたのに諦めたような顔して楽屋を出ていこうとするから急いで名前を呼んだけど、あっけなく入口のドアはばたりと閉まってしまった。
西宮さんが来てからというもの、俺とAの過ごす時間がだいぶ減った。西宮さんが入ってくるから。さすがに黙っていられなくなって、俺は口を開いた。

「あの、俺のこと狙ってんのかなんなのかわかんないですけど、Aとの仲引き裂こうとしてんならやめてもらえないですか？」

「はい？」

「正直嫌なんすよ、話に割って入られたりするのが」

はっきりとそう言うと、とぼけているのか何を言ってるのかわからないというような顔をして突っ立っている西宮さん。
するとびっくりするほど真顔のまま、西宮さんは話し始めた。

「……私全く目黒さんのこと狙ってませんよ。どちらかというと、というか圧倒的に東雲さん狙いですよ。私」

「………えっ！？」

今人生で3番目くらいに入りそうなほど衝撃的な言葉が聞こえた気がする。
しののめさんねらい……東雲さん狙い？！

「間に割って入ってたのはすみません。でも私東雲さんが好きなんです！常に東雲さんの隣にいる目黒さんが羨ましくて、でも嫌で東雲さんから距離を取らせようとしてました。ごめんなさい」

「じゃあ俺じゃなくてAのとこに行けばいい、のでは……」

「そ、そんなの出来るわけないじゃないですか！私東雲さんになんて呼ばれてるか知ってます？帆乃ちゃんですよ！下の名前で呼ばれるだけでも心臓壊れちゃいそうなのに無理に決まってます！」

めちゃくちゃ喋るなこの人……西宮さんの気持ちが分からなくもないのがなんか悔しい。ていうか、

「え、俺めちゃくちゃ自意識過剰じゃなかった！？」

「はい、何言ってるんだろうって思いました。私が好きなのは東雲さんなのに」

「Aが好きなの？！」

「そう言ってるじゃないですか」

「その…恋愛として？」

「そうですよ。東雲さんのことそういう目で見てる時もあります」

なんでこの人こんなに俺にはバカ正直なんだろう。ここまでぶっちゃけられる力があるならAに言ってしまえばいいのに。
そんなことより思わぬ所からライバルが現れて頭がぐちゃぐちゃだ。やばい。でもとりあえずなんか勘違いしてそうなAに弁解しなきゃ。明日も会う予定があるのが何よりもの救いだ。