婚約破棄のその日まで【tn】

3.街へお出かけ ページ4

それから彼は頻繁に家に来るようになった。

ある日は、公爵に連れられ
またある日は1人で遊びに来たり



平穏な毎日。




それが崩れたのは



私が9歳、彼が14歳の時だった。





今日は月に1回の街へと遊びに行く日。

天気は良好、体調も万全。
本屋さんへ行こうか、お菓子屋さんも良いな




「A」




今日のスケジュールを頭の中で組み立てていると優しげな声で私を呼ぶ声がした。




『おはようございますトントン、お迎えありがとうございます』


「おう。おはよ、今日はどこ行きたい？」




街へ出かける時は目立たないように地味な服に帽子を被る。
トントンもいつもはかけていないメガネをかけてちょっぴり変装をするのだが…顔が良いからやっぱり目立つことには変わりなかった。




「さてここから出たら兄妹やで」


『はい、お兄さん』




設定はそれなりにお金を持っている家の兄妹。
その設定でもちょっと危ないが貴族の子どもだと分かるよりかはマシ。

それにただの庶民と言い張るには着ているものも上等だし育ちも違いすぎる。
これで庶民だと言い張るのは、自分は偉いとこの子どもです。と言っているようなものだ。




「A、どこ行きたい？」


『本屋さんへ行きたいです、それと時期的にイチゴタルトが売ってると思うのでケーキ屋さんも』


「おん、分かったで」


『トントンは何処か行きたいところは？』




私の問にうーん、と悩みながら辺りを見回して「あそこの雑貨屋気になるな」と指をさす。




『本屋さんから、順番に回りましょうか』




はぐれないようにトントンの手を握ると慣れたように握り返された。



いつものように本屋さんへと行き、その後カフェ付きのケーキ屋さんに寄って季節限定のタルトを堪能。最近始めた刺繍の為の糸を見て周り気に入った色を買った。


そしてトントンが気になると言っていた雑貨屋さんへと入る。




『雰囲気の良いお店ですね』


「せやな…」




前世で言うアンティークショップみたいな感じのこの店は先週出来たのだ、と若い店員さんが教えてくれた。

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