婚約破棄のその日まで【tn】

3.書記長補佐の日常 ページ19

「女性の補佐官さんって珍しいですね」




じーっと見つめてくる視線は品定めされているようで居心地が悪い。
そんな心情を察してかトントンが庇うように私の前に来てにこりと笑った。




「彼女は学園をトップの成績で卒業しまして、総統自らこの役職に就けたんですよ」


「まぁ！優秀なんですね！」




ぱっと笑顔に戻った姫様に先程の妙な雰囲気はなく内心ほっとする。
社交界で良くあるあの視線は女であれば誰しもが体験するものではあるが、私はいつまで経っても慣れることができないでいた。




「書記長補佐ということは仕事も割り振られるんですか？」


「ある程度は」


「じゃあ！今日こそお茶会出来ますね！！先程オスマン様に会って約束をしてきたのです！」




無邪気に笑いながらトントンの軍服の裾を引っ張る姿は私と同い年に見えないくらい可愛らしくて、ちょっとだけ羨ましい。

対するトントンは面倒くさいと困ったが混ざったような複雑な顔をしている。
フレンドリーでも相手は王族。正当な理由がない限り断るの難しいものだ。



…しょうがない




『トントン様、ここは私にお任せ下さい』


「え？」




あまり行かせたくはないけども…

さっさと行ってさっさと帰ってきてください。という目線を向けると申し訳なさそうな表情を浮かべ頷いた。




「じゃあ、少しの間トントン様お借りしますね！」



にっこりと嬉しそうな笑顔を私に向けてからトントンの腕にそっと寄り添う。



その人、既婚者ですけどね

この世界には左手の薬指に指輪をするという習慣がないので既婚者かそうでないかをパッと見で判断するのは難しい。

それに元々私たちは結婚したことを隠してはいる…



でも、

何かお揃いのもの欲しいし、今度、指輪を強請ってみようかな



ちょっとくらいワガママ言っても許されますよね




部屋を出ていく2人の背中を見送ってから彼の机の上の大量の書類へ向き直り、ため息を1つついて1番上のそれを手に取った。









あまり機嫌が良くない彼が、美味しそうなお菓子を持って戻ってきたのは3時間後のことである。

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