婚約破棄のその日まで【tn】

2.ささやかな結婚式【tn side】 ページ16

結婚式は無事何事もなく終わった。
特注したレースをふんだんに使ったウェデングドレス姿のAはそれはもう綺麗で、正直なことを言うと他の誰にも見せたくなかった…。



結婚式は女性の為のものである。
だから、将来結婚式を挙げるなら好きにさせてあげなさい。

と俺に散々説いたのは何故か父さんで、
過去に何か失敗したのだろうか？

と思い母さんに聞いてみたら圧のある笑顔だけ返されたのはちょっとした恐怖だったのを今でも覚えている。



「これで良かったんかな…」



俺の…というか幹部の都合で結婚式は本当にささやかなものとなってしまった。

口では十分だと言っているAだが、もしかしたらもっと盛大にやりたかったのかもしれない…



「トン氏どうしたん？可愛い嫁さん貰ってため息つくとか贅沢か？」


「なんや大先生、どつくぞ」


「なんでキレてん？？」



へらへらと笑いながら隣に座り酒を煽り始める大先生こと鬱は酔った他幹部にもみくちゃにされているAを見て、ええなぁ〜若い子和むわぁ〜と呟くとこちらを見た。



「で？何が、これで良かったんかなぁって？」


「聞いてたんか…」


「聞こえたんや」


「…」



しれっと答える彼は本当に人の心情に鋭い
その有能な場面を書類にも向けてほしいものだ…。

無理だろうけど



「ほれほれ早くボクに相談してみぃ？」


「……結婚式、こんな小さい規模で良かったんかなぁって…女の子こらしてみればもっと華やかで沢山の人に祝福されたかったちゃうかなって…」



イラッとしつつも彼ならばこのもやもやを解消してくれるやもしれない
そう思うとすらすらと口から悩んでいることが出てくる。



「なんや大したことない悩みやなぁ！」


「ぶち殺すぞ」


「ま、まぁまぁ！

そういうのが気になるなら本人に直接的聞いたらええねん！」



俺の視線から逃げるように目線をAに戻し彼女を呼ぶ。



『なんですか？』


「おん、トントンがAちゃんに聞きたいことあんねんて」



え？俺が聞くん？
てっきり大先生が聞いてくれるもんやと思って油断していた為すぐに言葉が出てこない。

もっとでかい教会で式あげたかったか、とか
飾ってある花の種類増やした方がよかったか、とか

細かく聞きたいことは沢山ある。

しかし、



「今日、どうやった？」



俺にはこうやって聞くのが精一杯だった。




『今、私が、世界で1番幸せな人だと思うくらいに幸せです』




いや、今世界で1番幸せなのは間違いなく俺やと思うわ。

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