雀の囀り。燕のジレンマ。【伏黒甚爾】 (ページ7)

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06:微睡(6) ページ7

お前を観察して分かったのは、朝から晩まで屋敷を駆けずり回ってて、話す機会がねぇって事。

こっちは後から後から、次々と疑問が湧いて来てるってのに、となったら多少は強引な手段を選ばせて貰う。

｢…よぉ｣
｢こんにちは甚爾様｣

犯行予定時刻は昼間。
なるべく人が掃けてるタイミング。
お前が1人で男風呂掃除してる時を狙って声をかける。

｢…ちょっと話いいか？｣
｢何なりと｣

軽い世間話の体で話を聞いて、内容次第に拠って実行に移すか否かを決める事にした。
一旦、作業の手を止めるお前の面を確認して、やっぱりあの時の奴だと確信。

｢…お前はこの家の人間か？｣
｢まぁ、恐らく？｣
｢…はぁ？｣
｢分からないです｣

まともにお前と会話した事が無いから、少し変な奴だなって位。話を聞けば、男だけど術師を目指す訳でもなく、女中に混ざって家事ばかりやってると。

｢とまぁ、こんな感じです｣
｢…なら呪力は？持ってんのか？｣

確かに男なら術式の有無を言わさずに日々鍛錬とか、訳の分からねぇ事を強制されてる筈で、そうなると懲罰室に行かされた意味が分からねぇ。

｢持ってないです？｣
｢…何でさっきから質問ばっかり返す？｣

だとしたって絶対に何かは持ってる。もしかして術式持ちだと疑われて、確認の為に懲罰室に入れられたのかとも。

｢教育を受けていないので｣
｢…一般人か｣

術師としての教育を最初から受けてない。
作業を再開したお前の後ろ姿を見ながら思考を巡らせ、さっきの反応を思い出しても、よっぽどじゃなきゃ嘘は吐いて無いのは分かった。

｢…なら、天与呪縛は？｣

最後に思い当たる節を尋ねてみる。
これの返答次第に拠っては作戦を実行に移す。何も知らないなら掻っ攫う。んで、問い詰める。

｢すみません。私には意味が｢来い｣
｢どちら迄｢黙っとけ｣

作戦決行。

一先ずは誰も居ない、人目に付かない場所まで移動して、何を何処まで理解してるのか確認。それから理解してねぇ部分は説明して、分からせた上で話を聞く。

｢(鈍臭ぇ奴)｣

お前の腕を掴んで廊下を歩けば、ズルズル滑って転びそうになるやら、ガタガタ音を立てて持ってた掃除道具を落とすやら。

｢全部ほっとけ｣

何かにつけてドジを踏んで騒音を立てやがる。今お前のマヌケに逐一構って、屋敷の誰かに見つかってもダルい。

｢…では｣

言った通りに手に持った物を全部。
お前は廊下へ投げ捨てた。

俺のお前への初対面の印象は、お綺麗なお顔の付いたお馬鹿。