雀の囀り。燕のジレンマ。【伏黒甚爾】 (ページ44)

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本日これからの、夕食の席が何とも言い難く。発言の自由が許される今のうちに、一言コメントさせて貰うと、俺には関係ないよね。舌の根も乾かぬうちにもう一言。遺書は懐で温めてるよ。更に一言。拷問の間違いだよね。

言い難く信じ難い夕食の席の何が如何したと問われれば、禪院家の血筋と血統。その直系に名を連ねる方々が一堂に会する。言わば家族の団欒か親戚付き合いが行われる。その場に俺の席がある。と言う事。

｢(行きたく無いなぁ)｣

とは言え俺が座る席の位置は末席で、下の下の下の座。これが当たり前の話である事より先に、そもそも俺の席があること事態が前代未聞。最初は毒見係を任されたのかと疑った程で、それにしたって位置が可笑しい。

順に真希、真依と並んで最後に俺が居る。他の誰かがパッと見て、抱くであろう感想を安直に察して表現すると、俺は禪院Aである。つまりこれが何を、禪院の血筋を持つ者であると示している事より他に無い。

そんな席を直毘人様が俺に設けるとは、到底考え難く。

｢ねぇA。あなたも、でしょ？｣
｢…はい｣

そして大人しく作業をしている俺の耳に掛かる吐息。腹に回された腕。これでもう耳を疑う余地も無い。背後に居られるのはご機嫌で腐りきったお嬢様。因みに此処は厨房。俺は配膳の仕事中。ふと、俺達の秘密の関係に思いを馳せる。

安牌でおっ○いを押し付けて下さる有難い女中の面子は、今や子を持つ親となったり、ならなかったり。人員を増やしたり、増やさなかったり。ある一定の需要と供給の上で、しぶとく俺を支持する派閥に近い団体になった。

｢(何だかなぁ)｣
｢双子ちゃんのお迎え。行かなくて良いの？｣
｢これが終わったら…行きますよ｣

軽く振り返って見れば腹回りの腕に力が篭もる。俺の顔面にもそろそろ飽きか、慣れてくれれば良いものを。歳を重ねて余分な肉が削げ、代わりに大人の魅力が増した寧ろ良い。が、彼女達からの感想。

この方々からすると俺は殆ど宦官と同じ。ソッチ系の人間だと認定されていて、危険が無いから話す時の距離が近いのって何のって。これで俺のご立派様が元気に仕事を出来るのなら話は別だけれども、今更で誰の何に対してもピクリともしない。

｢(恥の多い生涯でした、なんつって)｣
｢あなたにも来てるわよ？お・む・か・え｣
｢…はい？｣

テンションの高い含みのある声の理由は何かと、探す必要もない。首を回した方向から視線をズラせば、厨房の出入口に直哉が立っていた。