22:零(2) ページ22
その方が気分も晴れる。
外に出た瞬間に雨が上がって、空を見れば雨雲が真上から逸れるのが見えた。
この晴れ間は長く続かない。遠くの方にまた次の分厚くて黒いのが、風に運ばれてゆっくり近づいて来てる。今の所は何事も無く外に出れただけでも良し。
息を吸い込むと肺を満たすのはじっとりと湿った空気。お世辞にも気分転換に最適とは言えねぇ。むしろ肌に纏わりつく湿度がウザったくて、もう何とも。
「(…Aなら。如何するか)」
降って湧いた考えに合わせ、淡々とお前の思考回路を遡ろうとする。こうしたい。だからこうして、こうする。
「(…分かる訳ねぇ)」
俺にはお前の終着点が分かってても、途中経過なんざ全く想像もつかん。でも不思議と何となく、今の状況を打破出来る突飛な打開策に打って出る筈だとは思う。
『アハハ!馬鹿で上等!んで楽しい瞬間に死にたいの!俺は!』
あの。綱渡りのピエロは客にウケるタイミングを予測。分析。判断して狙いを定めて行動をとる。
先ずは戯けて舞台に上がり、サクッと華麗に綱を渡りきって拍手喝采を浴びるか、はたまた間抜けに転がり落ちて嘲笑と同情を誘うか。
後者なら、大袈裟に足を引き摺って再登場。得意気に何かしらの上等な芸を見せ、拍手喝采を浴びつつ満足気に〆め、場を温めてから恭しく引っ込む。
「(…俺には無理だな)」
もし不測の事態が起こっても打って返す。全てが最終地点に至る様に設定されてて、意味も無くタダ転げ落ちた。終了なんて事はない。お前が家を出て桶屋。必ず儲かる。
「(…あれは)」
お前の、前座芝居が得意な事を何時知ったか、思い出したくはねぇが覚えてる。何が有ったかも。忘れられない記憶の隅っこで俺が隠れて泣きそうな、泣いてたかも知らない時。
『さぁさ。寄ってらっしゃい、見てらっしゃい』
あの時。見つかって、事態を察知したお前は俺を1人にしなかった。寧ろ話しながら近づいて来た。
『此方にあらせされるは稀代の御方。禪院甚爾様に御座いまする』
正直に言うと腹を立てる余裕すらなくて、ただ漠然と顔を背けたのは覚えてる。しかもその後すぐ覗き込まれた。
『さすれば。おやぁ〜?何か暗雲立ち込めたるご尊顔。ともなればぁ、何があったか』
俺に見えてたのは戯けてて笑える仕草や表情。
お前を思い返して気持ちの整理が、頭が片付いて来る。
『俺の胸なら借りて貰える?』
「(まどろっこしい、面倒臭ぇ)」
気分を晴らすなら、俺はお前を探しに行きゃ良いだけの話。
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作者名:ゆきみ大福 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mutsuki159/
作成日時:2021年6月12日 11時