雀の囀り。燕のジレンマ。【伏黒甚爾】 (ページ20)

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20:囚人のジレンマ(10) ページ20

でもこれは、お前が居て良かったと感じる自分と相対する考えで、ふと気付いた時には遅かった。

無いなら掴めば良いだけの話。
そうすれば多少の難が有っても全部を手に入れられる。お前は禪院家の人間でも無ぇし、いっくら学が無くたってそれ位の事は思い付く筈。

｢(居なくなるんだろうな)｣

俺より歳上だし遅かれ早かれ、何時の日か、何時の間にか。考えると息が詰まって嫌になる。置いて行かれるからか、何なのか、理由なんざ俺にはさっぱり。

｢(つーか今は別の理由でむしゃくしゃしてる)｣

気分転換で外へ出ようにも、ここ最近は雨音が鳴り止んだ試しが無い。しかも部屋を出て万が一、仮に、もしも、一瞬でも目にゴミが入ると高確率で再起不能にする自信がある。

こうなった時には諦めて部屋に籠るしか無い。俺は逃げてんじゃ無くて、ゴミが自ら焼却炉の予約取ってから来るのを待ってるだけだ。散らかした後始末まで相手する気にもならねぇ。

｢(雨、止むのか？)｣

ボタボタ五月蝿く、絶え間なく鳴り続いた音が徐々に間隔を空けて、緩やかになっていく。それを頭の中で音に合わせた情景に膨らます。

空から降ってきた雨粒が屋根瓦に当たって、元よりデカい雫になってボタボタ垂れて、雨足が弱まって垂れ落ちる間隔迄が徐々に長く、長く。

｢(なら…出れるな)｣

このままのペースなら止むか、それか怠くねぇ位に収まる。そう踏んで外に出る事にする。今の時間帯は昼下がり。よっぽど暇なゴミ屑が居ない事を祈るしか。これは、俺にはどうしようもならん。

考えれば考えるほど胸糞悪ぃ上にどうにもなんねぇ。八方塞がりもいい所。何が如何したの理由を思い出すのですら虫の居所が悪くなる。キレ散らかして痛いめ見せれば解決すんのか。否。

｢(俺も多分…愚痴っても仕方ねぇ)｣

無いなら掴めば良いだけの話。
最終的には諦めて全部ほっぽり出す。何なら仕返しすんのはそん時に纏めてドカン。派手に汚ぇ花火でも何でも上げてやる。

｢(そうすりゃ、Aなら…)｣

たぶん大喜びで腹抱えて爆笑。俺を止めたりはしない。

今頃はどっかでドタバタしてるし、色々と頭ん中でしっちゃかめっちゃか巫山戯倒して、笑顔貼り付けて楽しそうに仕事してる。確実に。これは断言出来る。

お前の本性を知らなきゃ楽しそうに見えるが、知っちまうと結構痛々しい気がしないでもない。そうなると結局、堂々巡り。

ただ今の感じで俺の欲を言えば、鉢合わせするならお前が良い。その方が気分も晴れる。