雀の囀り。燕のジレンマ。【伏黒甚爾】 (ページ12)

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12:囚人のジレンマ(2) ページ12

｢意図が分からない、バレたら死亡確定。なので話を逸らしました｣

頭の中はお花畑。早すぎる桜の開花前線がやってきて、麗らかな春が到来してる。今は青葉の時期だから季節は初夏。熱く乾いた空気が肺を満たす時期。

あえて一言コメントすると、年越ししたね。

俺はずっと自分の頭が可笑しいのだと疑心暗鬼になっていた。だから今は嬉しいのに甚爾は違うみたい。

｢…悪かったな｣

暗い顔で謝って来るし、嬉しいと感じた俺がやっぱり可笑しいのだと感じる。もしかすると、甚爾はそんな事は無いと否定して欲しかったのかも知れない。

｢此方こそ。お忘れ下さい｣
｢…戻っていいぞ？｣

嫌だと言いたくはあるけれど、これ以上に甚爾の気分を害する訳にもいかない。そんな事をすれば死亡時刻は今すぐ。場所は此処。死因は神の怒りに触れた。だなんて笑え、

｢要件は、お済みですか｣
｢…おう｣

無い。
なら即時退却しないと屋外だし、いきなり局所的悪天候で雷が落ちてくるかも知れない。

｢(見よ。これがラピュ…。って、有りだな)｣

女の子が降って来たら嬉しいなって、甚爾を置いて屋敷へ戻りながら考える。

どんな視点から考えても、疑問より先に嬉しい。どう考えたって恵まれてるし、何なら一緒にお手手を繋いでえいやぁと屋敷を破壊したい。

｢…戻りたくないなぁ｣

思わず口からポロリしたら、襟首を掴まれて元の場所まで引き摺り戻された。

｢今なんつった？｣
｢あ、いえ｢なんつった｣
｢(やっばーい)｣

甚爾様がお怒りだって思った。でも、もし仮にそれで空から女の子が降って来るなら、それは、それで、願ったり叶ったり。

｢もう少しお話しを拝聴させて頂ければ、って｣

寧ろ神様。仏様。有難う甚爾様って感じ。
甚爾の必死な顔を見てると、もしかして甚爾も此方側なのかと語らいたくなる。

｢戻りたくない…。もっとお喋りしたい｣
｢…俺も。同じ事考えてた｣
｢(お主もか)｣

これは魂消た。しかし、美味しい役所は渡さぬぞ。何て考えていれば、理由は分からないけど甚爾が凄く嬉しそうな顔をしていて、俺も嬉しくなってきて、

｢だって、屋敷の人間と話しても面白くねぇし｣
｢(そっちかい)｣

頭の中でツッコミ入れたのが良くなかった。ネジが外れて可笑しくなって、笑い諸々がまろびでる。

｢アハハッ！俺も！嫌味ばっかだし、所構わずペッて毒吐くし、もうやんなる。何時か10円ハゲ出来ちゃうよ？｣

素直な言葉を口にしたら、甚爾は楽しそうに笑ってくれた。