検索窓
今日:14 hit、昨日:7 hit、合計:38,238 hit

11:囚人のジレンマ(1) ページ11

「アハッ。やっぱり優しい人ですねぇ」
「で、お前の結論は?」
「私も同じですよ」

面食らう。
最初から言えよとは思ったが、隠してた俺が悪いと分かればぐぅの音も出ねぇ。

「意図が分からない、バレたら死亡確定。なので話を逸らしました」

隠さず笑ってあっけらかんと言い放つ。やっとお前の表情と言葉、思考のイメージが俺の中で1つに纏まった気がした。

でもそうなると、この話には結論が出て終わりな訳で、これ以上はお前を無駄に引き止める事になる。

「…悪かったな」
「此方こそ。お忘れ下さい」

笑みを貼り付けたまま、お前は屋敷の方をじっと見て、きっと頭ん中では仕事の事を考えて、今すぐ会話を切り上げたいと思ってるはず。

それに何となくモヤモヤして、もう少し話したいような、物足りない感じ。

「…戻っていいぞ?」
「要件は、お済みですか」

今の俺の中には同じ考えの奴が居たって安心感と、周囲の人間に対する猜疑心で満たされてる。彼奴らは疑問を持ってるかすら分かんねぇ。

その癖、何か鬱憤が溜まれば気晴らしに、これが当然みたいに当たり散らかして来るし、それもムカつくから反抗するってだけで。

「…おう」

屋敷に向かって行くお前の背中を見ながら、残念だと感じてもどうにもならん。これでもう話す事も無いだろう。
少なからず1人でも問題意識を持った奴がいると分かった。それがこの時間で得た収穫。

「…戻りたくないなぁ」

ポツリと寂しそうな声が色んな音に混ざって聞こえた気がして、反射的に体が動く。慌ててお前の襟首を掴んで元の場所まで引っ張り込んだ。

「今なんつった?」
「あ、いえ「なんつった」

俺が聞いた幻聴かも知れない言葉を、もう一度聞きたい。行動の理由なんてそんなもん。
目を白黒させて鳩が豆鉄砲食らった状態のお前から色良い返事を待つ。

「もう少しお話しを拝聴させて頂ければな、と」

さっきのと違う目上に向かって体裁を整えた言葉。
俺が欲しいのは違ぇやつだから、ジッとり睨んでやる。察しは悪くないのか、お前は諦めて躊躇いがちに口を開いた。

「戻りたくない…。もっとお喋りしたい」

やっと良い言葉が聞けて、それが普通に嬉しくて、自分の口元が弛むのが分かる。

「…俺も。同じ事考えてた」

言えばマジかと目と口、両方パカッと開き驚いた表情。初めて見る笑顔以外の顔を俺に向ける。

「だって、屋敷の人間と話しても面白くねぇし」

ダメ押しに俺の本音を伝えれば、お前は声を上げて笑い出した。

12:囚人のジレンマ(2)→←10:微睡(10)



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.5/10 (43 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
78人がお気に入り
設定タグ:呪術廻戦 , 伏黒甚爾 , 男主
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:ゆきみ大福 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mutsuki159/  
作成日時:2021年6月12日 11時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。