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0042:魔王―残光― ページ44

【ギャロ】

「自惚れてた。俺は強いと思ってた。死に時を選べる位には強いと思ってたんだ」

壁に背を預け、力なく凭れかかっていた虎杖が再び立ち上がろうと、足に力を篭め体勢を立て直す。そんな彼の声に呪霊はピクリと反応を返した。

「でも違った。俺は弱い」

彼が眺める視界には、第一関節まで擦り切れて無くなった右手と、既にない左手首より先。その手で何かを守るか、救うか、導くか、何れかでも出来ると思っていた。とでも言いたいのか。

「あ゛ーーー!!死にたくねぇ!!嫌だ!!嫌だぁ!!!」

そのまま地面に向かって頭を垂れ、死に対する純粋な恐怖を叫んだかと思えば、死ぬのだと独り言ちて天を仰ぐ。グズりとべそをかきながら、彼の頭の中で想起されている問答は、何度目になるか分からない。自身を奮い立たせる為の言葉。

『呪術師に悔いのない死などない』
「(それでも、この死が正しかったと言える様に)」
『呪いは人間の負の感情から産まれる』
「(ならば憎悪も、恐怖も、後悔も)」

そして頭の中に流れ込むイメージは、施設内で見つけた受刑者の無惨な遺体。目の前で彼を嘲笑った特級呪霊。己自身が特級呪物、両面宿儺の指を飲み込んだ瞬間。

「(全て出し切れ)」

覚悟を決めたのか虎杖の纏う雰囲気が、悲壮感漂う物からよりしっかりした覇気に近い物に変化し、掲げた右手に呪力が籠る。

「(拳にのせろ!!)」

そのまま振りかぶり呪霊に伸ばした拳は、気合いが充分に入った、力強い打撃であったであろうにも関わらず。呆気なく呪霊の片手で受け止められてしまう。

ニッと不敵な笑みを浮かべて虎杖を見る呪霊と、焦りか苦渋かの表情を浮かべる虎杖が対峙する。

「クソッ!!」

苦々しげに吐き出した彼の声と、その時。その場に轟いたのは犬の遠吠え。

「(伏黒の合図…!!)」

長く高らかに響くその声の持ち主は、伏黒の術式"十種影法術"で顕現した式神の「玉犬」であると、いち早く察知した虎杖は伏黒が釘崎を連れて領域(ココ)から出た事を知る。

それと同時にじわりと彼の顔面に浮かび上がる。黒々とした刺青の様にも見える独特な紋様。姿形の特徴は虎杖その人と何ら変化はない。

しかし、彼の纏う雰囲気が突如ゾワリと威圧的な物に変化する。今や対峙する呪霊に彼を嘲る余裕はない。寧ろ呪霊は恐怖を全身で感じ取っていた。その場に立つのは、産まれたての特級呪霊は未だ知らない。

同じ特級を冠する、呪いの王。両面宿儺。

「つくづく忌々しい小僧だ」

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ゆきみ大福(プロフ) - ボブさん» コメントも評価もありがとうございます。文章力が足りなくてすみません(´;ω;`)分からない所を教えて下されば!解説作ります! (2021年7月30日 22時) (レス) id: 3362b7a468 (このIDを非表示/違反報告)
ボブ - お話少し難しいけど、読んでいて楽しいです!毎日更新楽しみにしながら過ごしています!星の一番右端押しました!! (2021年7月28日 14時) (レス) id: 95a51c0b56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみ大福(プロフ) - 絶対に出て来るなぁ。笑える。低評価あざーす (2021年4月28日 12時) (レス) id: 3362b7a468 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ゆきみ大福 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mutsuki159/  
作成日時:2021年4月27日 23時

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