0027:人生はパーティーだ ページ28
【布袋寅泰】
この高さは小学生やその位の頃の目線だと20年程度は前の事を思い出す。
君の歩調に合わせて小さく上下する視界は、私から見えていた世界よりも幾分か広い。
太陽から遮るように生い茂る草木も、鼻先を掠める湿った土の匂いも踏みしめる音ですら良く聞こえる。
「元から1人。…寂しいも、分からない」
頭上からか細い声が聞こえてきて、どんな表情をしているのかと見上げても君は私を見ない。
私が今の君から感じているのは物悲しい雰囲気。
小さい頃の私は両親を見上げ、君はずっと私を見上げていた。
「〈(君にはこんな風に見えていたのかな)〉」
成長に連れ私は見下す事しかしなくなって、君は関係なく目線は合せようとしていたのに、私はそれに気付かなかった。
君は考え事でもしているのか、あえて話さないのかは分からない。
たどり着いた学長室の扉を開けば学長が待ち構えていて、君は何の躊躇いも無く私を学長に差し出す。
「何か言い残す事はあるか」
最後の時間が来たと言わんばかりに、私の反応を待つ学長と面を合わせて会話するのは何時ぶりか。
「〈…赦しを得たいとは思わない〉」
話そうと口を開くと、出るのは甲高い声。
自然と動く事は出来ても全てが私のモノでは無い。
「〈Aには全てを話していればと、何度も後悔した〉」
そうだとしても、紡ぐ言葉や成り代わった意識や思考は私のモノ。
「〈何かが変わったのかも知れないと…〉」
思い出すと偶に上手く笑えない程に、私は君に対してだけは会って話したいとずっと思っていた。
「〈あの日。Aだけが私を諫める事が出来たし〉」
それが為されなかったのは全て私が1人で決めようと君を突き放したから。
なのに君はこれから1人で私の望む世界を創ろうとしている。
「〈Aが止めれば思い留まれる。確かな理由があった〉」
これは言い訳にしかならない、私から君に対しての最後の言葉。
少なくともあの時、何も知らない君を1人で置いて行くべきでは無かった。
「〈同じ思いをさせたくない…〉」
あと少しで学長に捕まるのに君が何も言わないのなら、私から選択しようと思って君の手から抜け出し、しがみつく。
不自由でも戻って来られたのに、君を1人にはしたくない。
君が本当は"嫌"だと感じていると思うから。
「〈私はAと共に居たい!〉」
但し、君が赦せば。
聞き分けの無い駄々を捏ねる私を見て、微笑む君に幼い頃に見た面影が重なり、自分の手で屠った両親がチラついた。
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ゆきみ大福(プロフ) - ボブさん» コメントも評価もありがとうございます。文章力が足りなくてすみません(´;ω;`)分からない所を教えて下されば!解説作ります! (2021年7月30日 22時) (レス) id: 3362b7a468 (このIDを非表示/違反報告)
ボブ - お話少し難しいけど、読んでいて楽しいです!毎日更新楽しみにしながら過ごしています!星の一番右端押しました!! (2021年7月28日 14時) (レス) id: 95a51c0b56 (このIDを非表示/違反報告)
ゆきみ大福(プロフ) - 絶対に出て来るなぁ。笑える。低評価あざーす (2021年4月28日 12時) (レス) id: 3362b7a468 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆきみ大福 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/mutsuki159/
作成日時:2021年4月27日 23時