こんばんは 愛する世界―甲夜【呪術廻戦】

0017:アキレスと亀 ページ18

【Hello Sleepwalkers】

｢お｣

待ってたら建物の壁を抜けて外に、まだ空中だけど僕たちの方に呪霊が飛び出てきた。
すり抜けが出来るなら3級もない低級。

｢(祓われる前に逃げたか？)｣
｢祓います｣
｢待って｣

仮にそうなら野薔薇と悠仁はコイツに遭遇してるはずだし、野薔薇の術式なら祓える。
だから恵を制止した。

暫くも無い、空に浮かんだままの状態で呪霊の姿は消えて無くなる。
一瞬だけその内部に野薔薇の呪力が見えたから、彼女が術式を使ったのは明らか。

｢いいね。ちゃんとイカれてた｣

野薔薇は仕事をした。宿儺の顕現は無し。
Aが手を出したのかは帰って来るまで分からない。
だけど僕的には今の所、満足の結果。

｢おっかえりー｣
｢ッスー！｣
｢私、合格でしょ？｣

｢うん……Aは？｣

子供を抱えた悠仁。
かすり傷の1つもない野薔薇。
中に居た一般人の保護までしたのなら大満足。
でも君の姿が無い。

｢『呪力が濃いから歩いて来る』って言ってたわよ？｣
｢…へぇ〜｣

何となくの言葉の意味だけなら、お清め的な事をしに残ったのかもしれない。
そんな事も出来るんだ。そう思った。

【記録 2018年7月。西東京市 英集少年院 運動場上空】

｢…僕たちはその子を帰して来るね｣
｢おなしゃす！｣
｢2人は此処で休んでてー｣

優先をするべきはそっち。
考え事は保留にして恵と2人で子供を送り届けて、今はその帰り道。

｢(念押しはしたし、もう危ない場所には近寄れ無いだろうなぁ)｣
｢Aさんはお清めも出来るんですね｣
｢…らしいね〜｣

気を逸らす為に一般人の事を考えてたのに、恵に引き戻された。
僕が知らないAが居るのは凄く気分が悪い。
正直な事を言えば、かなり動揺してる。

【特級仮想怨霊(名称未定)。その受胎を非術師数名の目視で確認】

｢Aさんは本当に同期なんですよね｣
｢そうだよ？昔の僕らの写真見る？ヤっっバいよ？｣
｢…やめときます｣

恵は見たくないと言う筈だから、咄嗟に出た言葉。
見たいと言われても僕は見せたくない。

【窓が受胎を確認し、準2級術師 Aを派遣。避難誘導9割の時点で当該術師との連絡が途絶えた為、5名の在院者を残し施設を閉鎖】

｢お疲れサマンサー！！子供は送りとどけたよー｣

【緊急事態のため高専1年生3名が派遣され】

｢今度こそ飯行こうか｣
｢ビフテキ！！｣
｢シースー！！｣

【内1名 死亡】

僕は本当に、君も。上層部も。
知ってた筈なのに何も分かってなかった。

0018:組曲｢義経｣―悪忌判官→←0016:夜明けのBEAT

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す