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46:うたかたの日々 ページ47

【ザ ケセラセラ】

あのとき僕は今の顔を君に見せれば
きっと君は笑うだろう、そう思って君を見た


先に君がお風呂からでていく
タイミングをずらして僕も出れば新品の下着と甚平が置いてある

ひとまずそれらを身に着けて居間へ向かった

「お茶いる?」

君は湯気の上がる湯飲みの前で足を伸ばして座って
色違いの甚平を着て、僕の方に顔を向けてきた

頷いて返せば、お茶の用意をしてから
君は棚をごそごそと漁りはじめる

僕が一口湯飲みに口をつけたところで、テーブルの上に紙袋が置かれた

「それ貼って」

君は僕の横まで来て膝立ちになり
あざを出すように、裾を持ち上げズボンを手で少し下げる

そんな君を横目に、1番大きい湿布を用意してあげる

「大きいあざになったね」
「1枚で足りるかな」

試しに貼ってあげると、湿布からはみ出した赤い部分が覗いた

「…足りないね」
「まぁいっか!ありがとう」

楽しそうに笑いながら君は僕を見て言うと、身だしなみを直してから台所の方へ

「(恨み言の1つでも言えばいいのに)」

なんだか少しだけ罪悪感
それと頭と体の中でざわざわする感じ、少し気分が悪い

とりあえずお茶を飲み終えてから君を追いかけよう


後ろから台所で作業をしている君に声をかける
振り返って僕を見た君は泣きながら顔を歪めている
驚いて君に近づくと目に刺激を感じる

まな板の上には細かく刻んだ玉ねぎ

「手伝って、目、痛すぎる」
「…」
「お弁当とかの分もあるから量が」
「怪我したのかと思った」

まな板の前には、まだ手をつけていない玉ねぎ
視線をずらせば刻まれた分がフライパンに入ってる

確かに立っているだけで目がしみる

とりあえず包丁を君から奪って続きをする
その手元を君が見ているけど気にしない

やり方を聞いて作業を進めていく、だけど涙が溢れてきた

「汐路」

名前を呼んで君を見る
頬に涙がつたうのがわかる、隣にいる君はまだ泣いてるし

でもこんな僕を見て君はお腹を抱えて笑いはじめた
そのまま笑いながら居間に行き、ティッシュを持って戻ってくる

「選手交代しよう、美味しいハンバーグのために」

君はティッシュで僕の涙を拭うと、包丁を奪う様に横から体を入れてくる

手を離して場所を譲ると、瞳をキラキラさせて作業をはじめる

「恭弥くんも玉ねぎには勝てないね」
「煩いよ汐路」
「きっと美味しく出来るよ」

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作者名:ゆきみ大福 | 作成日時:2020年10月20日 17時

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