37:キラーチューンキラー ページ38
【空想委員会】
体が宙に浮いたかと思えば背中にくる衝撃と、上がる水飛沫
すかさず砂に手をついて上体を起こし、手で目元をぬぐう
するとまた視界の中で水飛沫が上がる
「(なにあれ)」
自分が海に投げられたのは分かる
でも2回目の水飛沫はふざけてるとしか思えない
「(汐路も飛び込んだ)」
飛沫が上がった場所を見ていると
君が体を起こし、僕を見つければ手を振ってくる
そのまま立ち上がりアンダーウェアを脱ぎ、丸めて砂浜の方へ投げたかと思えば
今度は仰向けで僕の方へ泳いで近づいてくる
「(咬み殺して、海に沈めてやりたい)」
そう思いながらも真横まで君がくるのを待ってあげる
バレないように浜まで戻っていてもいいけど
器用にも真横まで辿り着いた君は、顔を僕に向けて気持ちいいと笑ってる
呆れて視線だけ返せば、そのまま僕と同じ様に海中に腰をつけて座る
「…君、やる気「あったよ」
「ならなんで飛び込んだの？」
「一緒に海を楽しもうかなって」
口の中がしょっぱいと声を上げて笑う君に、少しだけ苛ついたけど面倒になってきた
「でもさっきのは本当に痛かった！」
「なにが？」
「お腹殴ったやつ、まだ赤いし絶対にあざ出来る」
言いながら君は攻撃が当たったのであろう箇所を見ながらさすっている
僕もそれを見てみるが、確かに明日には綺麗な青あざになりそうだ
しばらくそうしていた君は思いついた様にその場に立ち上がり
お返しだと言いながら僕の顔に水をかけてきた
「本当にイラつく」
君は僕の方に体を向けたまま、笑い声をあげて走って逃げていく
トンファーを浜に放り投げて立ち上がり、そんな君を追いかける
そうしていると砂に足を取られたのか、君の体が後ろに傾いた
それが分かったのが早いか、正面から飛びかかり彼の両肩を抑えて
勢いと体重でその体を海に沈めてやる
水面に上がる気泡が止まるまで、しばらくそのまま
満足してから力を込めた手を離し、体重を逃した
そうすると大きな水音を立てて、君の上体が海面から出てくる
君は項垂れたまま肩を揺らして呼吸を整えて、相当苦しかったみたい
「死ぬかと思った！」
「殺してやろうかと思った」
顔を上げて僕を睨む君にそう返せば、君は立ち上がりまた顔に水をかけてくる
今度は浜にむかって、僕に背中を向けて君は走っていった
そんな君を見てから空を見上げれば
綺麗な月が浮かんでいた
38:海月→←36:fall in love with you
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作者名：ゆきみ大福 | 作成日時：2020年10月20日 17時
