【REBORN】天にましま、しまうま～起～ (ページ35)

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【椿屋四十奏】

勝手に家に上がりお茶を入れる

君は何か落ち込んだりすると、毛布に丸まってしまうのも小さい時からの癖

もう何度も見ているし今更驚きはしない

電話に出なかったから心配しただなんて、絶対に言ってやらない
あえて君の部屋の襖を開けて、2人分のお茶を注ぐ

僕が一口飲んだところで毛布が動いたけど、無視して一息つく

「お茶」

匂いに気づいたのか君の小さい声は聞こえた、でもそれも無視する

電話を2度も、しかも1度は目の前で無視されたしこのくらいは当然だよ

お茶と言いながら毛布が居間へ這い出してくる、その姿はまるで芋虫

やっとテーブルまでたどり着き、君が毛布の中から顔を覗かせた

「お茶、じゃない恭弥くんだ」

テーブルの上の湯のみを持とうとしたところで、ようやく君は僕に気づいたのか

一旦イヤホンを外して湯のみに手を伸ばす
それを見て僕は君の前から湯のみを遠ざける

「電話、何で出なかったの？」
「…充電切れてて」
「ふぅん」

知っていてわざと携帯に電話をかけてやれば、彼の背後で小さく振動音がする

それに気づいて気まずそうな顔をしている君

「…どうせ落ち込んでたんでしょ」

素直に頷く君を見てから湯のみを近づけてやると、迷わず両手でそれに飛びついた

一口のみ込むと、じわりと瞳が潤みだす

二口目を飲む前には手が小さく震えて、湯のみをテーブルに戻した

「…こっち見ないで」
「…うん」

そう返すけれど僕は顔を背けない

君が泣く時はとても静か、顔さえ見なければ泣いていても分からない
見ていても無表情のまま涙が溢れるだけで

正直、僕は泣いている時の君は綺麗だと思う
何を考えているのか全く分からないけど

いつもとは真逆に気味が悪いほどに無表情
で、それは触れる事を許さないような

「(いっそ顔を歪めて泣けば、誰かが優しく慰めてくれるだろうに)」

君にその愚かさは素晴らしく良く似合っていて

「(いま触れたら消えて無くなりそう)」

そんな汐路が綺麗だと思う

君が落ち着くまでは、しばらくその姿を見ていよう

「…タイミング悪いわぁ」
「僕には関係ないよ」
「…せっかく我慢してたのに」
「そう」

「…昔もこんな事あった」
「…そうだったね」
「…あの時、恭弥くん居て助かった」
「…僕は気にしてないよ」

君がいま思い出しているのは、亡くなったお婆様の事だろうとは思うけれど

「…本当にありがとう」

君は真っ直ぐに僕を見て笑顔になった
それだけで充分だと思う