13:気づいてほしい ページ14
【ベースボールベア】
恭弥くんが俺にソファに座るように促す
とりあえずその真ん中に腰かけると、彼は真横に座った
「学校生活には慣れた？」
「……………紅茶飲みたい」
彼の質問の答えがイエスで良いのかと悩んでいると、何か飲み物をと聞いてきた
思わず呟くと恭弥くんが立ち上がろうとするから、その膝が伸ばされる前に彼の足に手を置いた
「お茶入れ」
宣言してぐっと腕に力を込め、恭弥くんをソファに押し付ける
「君、何をやってるの？」
呆れたように言う彼は足に力を込めて、立ち上がろうとしてるのが伝わってくる
「俺にやらせて」
俺が言って恭弥くんがため息を吐くと、足から力が抜けてソファに深く凭れたのが分かった
お湯をぐらぐらさせて、それから
ケトルの内側の線まで目一杯まで水を入れてお湯をわかす
「恭弥くんポッ「真上」
言われるまま真上の棚の扉を開けるとティーポットとカップ、ソーサー
2人分の茶器を取り出す
「お茶っ「右下上から3段目」
また言われるまま右手側下にある上から3段目の引き出しを開けると、何種類かお茶っ葉が入っていた
「(テンション上がる、とりあえず全部出そう)」
ケトルから音がしたからお湯をポットとカップに注いで、水を足して再びお湯を沸かす
沸騰するまでのその間に並んだ茶葉を１つ、また１つと蓋を開けて匂いを確かめる
胸いっぱいの紅茶の匂いで少し目眩がした
「恭弥くんは「好きにして」
俺好みの匂いのやつにしよう
同じ種類のも捨てがたいけど、結構飲んでるみたいだし
「…それで？…慣れたの？」
「慣れたけど、微妙」
「どう言う意味？」
「自分でも分からない」
恭弥くんの質問に答えながら茶葉を元あった場所へ戻していく
「そう、問題無いって報告だけど」
「問題は無いと思うよ」
俺は水場に向けた身体を彼に向けたけど
彼は立ち上がって大きなテーブルから書類の束を持って、またソファに腰かけた
視線は書類に注がれていて、たまに紙をめくっていく
「(難しい顔してるんだろなぁ)」
紙に向かって顔を傾ける彼の表情はわからない
そろそろだとティーポットのお湯を捨て、目分量で茶葉を入れる
ケトルから音がした
ぐらぐらと音がするお湯を注いで、茶色く染まって
浮かんで、沈んでいく茶葉を見て
一瞬だけ何か感じたけど、良く分からないそれに蓋をする
俺はそうすればやり過ごせるのは知ってた
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作者名：ゆきみ大福 | 作成日時：2020年10月20日 17時
