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12:fantasy ページ13

【ラマ】

前触れもなくそれは起きた

『1-A藤城汐路、応接室へ』

突然の校内放送にざわつく教室の雰囲気
名指しされた彼は困惑顔だ

応接室へ行きなさい、と反論を許さない教師の声が汐路と生徒に降りかかる
すると教室の全員からの視線が彼に集まった

彼を置いてけぼりにして、この場に居る事が罪だと言う様な張り詰めた空気が流れる

「…失礼します」

汐路は言うと席を立ち、自分の荷物をもって教室を出て行った


「(あーあ、やんなっちゃうな)」

「("応接室"って何、何処)」

考えてながら歩く汐路は、その単語の意味も場所も知らない
彼が分かるのは視線が怖かったという事のみ

彼は帰ろうかと諦めた様な表情で下駄箱へ向かい、校内図を探す


「君そこで何してるの?」

汐路は声がした方へ視線を向ける、すると先程までの表情が嘘の様に明るくなった

「あーあ!驚いた!恭弥くんだ!」
「驚いたじゃないよ、呼び出したんだけど」

恭弥くんと呼ばれた少年は風紀委員長をしている雲雀恭弥
学ランの右腕には風紀の二文字が刺繍された腕章が誇らしげだ

首を傾げる汐路を雲雀は見つめると
重たいため息を吐きながら、視界を遮る様に目を覆って項垂れる

「俺、何か悪いことした?」

汐路の質問に返信はなく、彼は表情を曇らせて気まずそうにしている

「…ついておいで」

雲雀は呆れた様な目で彼を見据えると、制服の裾をはためかせ背を向けて歩き始める

汐路はそんな彼の横を歩こうと、その背中を追いかけた


追いつくと雲雀が口を開いた、汐路は暗い表情のまま彼の言葉に時折り頷く

「なかなか来ないから、教室に迎えに行った」

「荷物を持って出たと言われたよ」

「君は帰ろうとでもしてるんだと思って」

「僕に探させる手間をかけた」

話し終えた彼はドアノブに手をかけ、真っ直ぐに汐路と視線を合わせる

扉を開けて、入れと促す様に視線を室内に向け

指示通り入室した彼を見届けると、自分も入り扉を閉める

「僕が君をここに来るよう呼び出した」
「さっきの校内放送?」
「そう、ここが応接室」
「へぇー、素敵な部屋だね」

先程までの表情とは打って変わって、汐路は笑顔で雲雀を見る
それを見た雲雀は諦めた様子で口を開いた

「…僕に何か言う事ないの?」
「お久しぶり恭弥くん!探してくれてありがとう!」
「…他には」
「同じ学校だったんだね!知らなかった!」

「…その無知は悪いことなんだろうね」
「恭弥くん、やっぱ手厳しいわぁ」

13:気づいてほしい→←11:scarborough fair



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作者名:ゆきみ大福 | 作成日時:2020年10月20日 17時

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