10:ログマロープ ページ11
【日食なつこ】
ホイッスルの音が響くグラウンド
今日の体育の授業は野球のようだ
どうやら2チームに分かれる作業が難航している様子
困ったようにチームの輪から1人外れて立っているツナを、野球がヘタだからチームに入れたくないのだそうだ
「いーんじゃねーの？こっち入れば」
途端に一方のチームから誘う声があがったと思えば、不満声が聞こえるが彼は打たせなければいいと言う
誘ったのは山本武
一年で野球のレギュラー、生徒からの人望もあつい
そんな山本をツナは羨望の眼差しで見つめている、ツナと敵チームに入っている汐路もだ
「山本めっちゃ素敵やん」
「こっちは汐路がいるし勝確だよな」
「ダメツナがいるんなら楽勝だろ？汐路」
チームメイトはそう言って笑っているが、汐路は悩ましげな顔でそれを見る
バットから快音が響くと、弾かれたボールは遥かフェンスの上を飛び越えていく
「いや、わりーねー」
山本は自分の場外ホームランに手を合わせて、笑いながら謝って出塁した
ホームベースに帰るとチームから称賛、女子の歓声を浴びている
ツナはまだまだ羨望の眼差しで山本を見つめている
汐路はボールが飛んでいった空を悩ましげに見つめている
「山本、奴の運動能力と人望はファミリーに必要だな」
黒いスーツに身を包んだ赤ん坊は屋上、貯水槽の上からそんな野球の風景を見つめていた
時間は過ぎて翌日
「山本が屋上から飛び降りようとしてる！！」
途端に騒然とする教室内の生徒が急いで屋上へ向かう
ツナも笹川京子に誘われて屋上に行くかと思いきや、焦った様子でトイレに行きたいらしい
時を同じくして 汐路はトイレにいた
水を流して、手を洗い、ハンカチで手を拭くと教室へ戻った
「(誰もおらんがな)」
教室を間違えたのかと、彼は不思議そうな顔で廊下と教室を行ったり来たりしている
すると外から叫び声が聞こえてきた
驚いた汐路は窓を開けて身を乗り出すが、特に変わった様子はない
諦めて自席に着くと机に伏す、彼は静かに心臓が脈うつ音を聞いていた
そんな彼を他所に廊下が騒がしくなる
「あれ汐路教室いたの？」
「汐路も見に来れば良かったのに」
彼は頭を上げて彼らを見ると、彼らは汐路にその一部始終を話し始めた
最初こそ不思議そうな表情で彼らを見ていた汐路だったが、話も終わりに近づくと青い双眸輝かせている
「(俺はまたいい所見逃したっぽい)」
11:scarborough fair→←09:ロックンロールボーイ
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作者名：ゆきみ大福 | 作成日時：2020年10月20日 17時
