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モニタールームを後にし帝襟さんの2歩後ろを歩く。カラカラと響くスーツケースの音が異様に大きく感じるくらいの沈黙の末、話を切り出したのは帝襟さんの方で。
「呪霊、呪術……触り程度の知識は教えてもらったけど…………貴方のような学生が来るとは思わなかった」
「大抵の方はそう言います。でも呪術師として活動する人の比率は若い人の方が恐らく多い」
「そうなの?」
「皆呪霊に殺されるから、長く生きられる方が珍しい」
「ッ………… そ、う」
言葉を詰まらせる帝襟さんに少し罪悪感を抱きながら案内された部屋へと足を入れる。
ベッドや洗面台、キッチン、それから浴室まで。全てこの部屋内に完備されているようで特段必要なければこの部屋の中で暫く暮らせそうだ。食事に関しても定期的に食材や食品が届くらしいので私がこの部屋を出るのは恐らく夜の数時間のみになるだろう。
帝襟さんも、出来る限り選手たちに不安や不信感を与えないためにも呪術師の存在は公には出来ないと言う。尤もである。
ある程度の説明を受け、そしてこちらの行動内容も彼女に明らかにしたうえで解散する。私は早速ベッドの上でスーツケースを広げ荷物を取り出した。
……基本的に仕事の最中はこの制服を着ているから持ってくるものと言っても知れている。緩いTシャツと快適なレギンスを2着ずつと後はスマートフォンやそれ関連のアクセサリくらいでスーツケースの整理はすぐに終わった。ベッドの下に空っぽのスーツケースをしまい込んでついにそのベッドに身体を預けた。
これからの業務は基本夜間の活動になる。昔から丑三つ時がなどとよく言うがそれは間違いではない。呪霊の出現は夜が多い。この土地上昼であっても油断できないのはそうだがとりあえずは様子見だ。最初にモニタールームで見た時はいても精々4級。放っておいても支障のない奴らばかり。けれどこのざわざわとする空気は、何かが潜んでいる証拠。それを深夜、選手らが寝静まったころに祓うのがこれからの私の為すべきことである。
だから、それまで暇なのだ。
「……寝ちゃお」
ベッドの上に放っておいたTシャツとレギンスに着替えいそいそとベッドに潜り込んだ。
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タキタカ(プロフ) - 「へぇ。俺そういう映画とか見たことないから知らないや。というかさっきからオシャさん何ぼーっとしてんの?」 「……オシャ!!!」 「何!?!?」 〜「何て……??」ここで声出して笑いました。面白いです! (9月17日 22時) (レス) @page22 id: baee95592f (このIDを非表示/違反報告)
ことこと(プロフ) - ぐらす。さん» コメントありがとうございます!pixivの方でもお読みいただき光栄です。今後とも是非、よろしくお願いします! (5月24日 9時) (レス) id: fe3705f0cd (このIDを非表示/違反報告)
ぐらす。(プロフ) - pixivでもこの作品見てました。やっぱり面白くて好きです。pixivのほうでも無理しない程度に頑張ってください! (5月22日 17時) (レス) id: 6255010be3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ことこと | 作成日時:2023年5月15日 18時