Overdose 34 ページ36
リノヒョンのベッドに静かに眠るA。
顔色は少し悪く、眉間にシワがよっている。
軽くベッドに腰をかけて、Aの頬に手を添えてやれば擦り寄ってくる顔に思わず笑みがこぼれた。
「…ﾘﾉ…ﾋｮ、ﾝ」
「っ」
泣きそうな声の寝言。
俺の手に擦り寄りながらリノヒョンを呼ぶAに胸が締め付けられた。
Aがヒョンをどれだけ好きかなんて自分が1番分かってる。
ずっとそばで見てきたから。
それをわかった上で付き合って欲しいって言ったんだ。
仕方ない。仕方ないことなのに。
「……A、俺は…ヒョンジナだよ」
そう言って軽く唇にキスをする。
この感情を言葉に表すことはできない。
Aは俺を選んでくれたのに、心はヒョンのもので……。
でも、俺は手放したくなくて。
ぐちゃぐちゃだ。
感情がぐちゃぐちゃになった。
大切な人の大切な気持ちを奪ってまで自分のものにしたかったのか？
自分が本当にAを幸せにできるんだろうか？
手放したくない、愛してる。
でも、幸せになってほしい。
俺は何がしたいんだろう。
Aは……なんで俺を選んだんだろう。
いや、そんなの俺が傷ついた心に漬け込んだからでしかない。
あの日、もし手を引いて部屋に入るだけしてれば？
こんなに悩まなくて良かったのかな。
気持ちを抑え込めてたら……Aをさらに傷つけなくても良かったのかな。
「……A」
眉間のシワを伸ばすように親指で優しく額を擦ってやる。
眠るAの目尻からゆっくり伝う涙が見えてしまった。
もし、ヒョンが戻ってきてAを好きだって真正面からぶつかってきたらどうしたらいい？
もし、ヒョンがAへの感情に気づいたら……。
俺は簡単にAを手放せない。
でも、Aの幸せは願っていたい。
その幸せは俺がどれだけ頑張っても必死になってもAに与えれないのはわかりきってる。
どうしたらいい？
どうすればいいの？
誰か……教えてよ。
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作者名：山田 | 作成日時：2023年2月7日 0時
