Overdose 28 ページ30
そう思った瞬間、身体が無意識に動く。
冷えきったAの唇に自分の唇を重ね頭を包み込むように抱きしめた。
「ヒョン、ジナ…？」
「俺にしてよ……A」
「……っ！」
Aに感情を表に出すのは初めてだった。
本音は言いたくなかった。
だってAを幸せにできるのは俺じゃないから。
どうみてもお互い片思いのヒョンとAの間に入り込むことができないってわかってたから。
だから、諦めた。
いや……傷つかないように“感情に蓋をした”だけかな。
付き合うなんて自分が想像つかなかったから。
だから好き、大好き、愛してるのは俺の方なのに…なんて感情を《絶対的存在》でいいや、なんて気持ちに摩り替えた。
我慢して、我慢して、気持ちを摩り替えて、知らないフリをしてきた。
Aに親友だと言われれば言われるほど、小さな傷を心に刻んだ。
でも、それでいいと思っていた。
それでいい、Aの親友でいれればそれでいい。
そう思ってたのに……。
「ヒョンジナ…泣かないで」
目の奥がチリチリとし、頬に伝う熱。
腕の中から抜け出したAが優しく頬を拭ってくれる。
こんな時でも優しいかった。
「はは…ごめん、ごめんねA。気持ち悪いよな、親友だって思ってた奴にキスされて抱きしめられて」
自分で言ってて傷ついてる。
ズキズキと痛い心に必死にまた蓋をしようとしている。
Aの目を見ることができない。
「ヒョンジナ…」
蓋をしたい感情は溢れかえって止まらない。
好き。
好きだよ。
大好き。
なんで俺じゃないの。
なんでリノヒョンなの。
俺なら幸せにできるのに、大切にできるのに。
俺にしてよ。
俺を選んでよ。
「ずっと前から好きだった……俺にしなよ…A」
本当は言うはずなんてなかった言葉。
とうの昔に蓋をしていた言葉。
叶わないってわかってた言葉。
「……うん」
「っ」
勢いよく顔を上げればAはまた悲しそうに笑っていた。
「いい、の？」
その言葉に静かに頷くA。
「……でも、リノヒョンへの気持ちが完全に消えたわけじゃない…それでも、いいの？僕なんかで」
分かりきってることだった。
昨日今日で消えるくらいの感情じゃない事なんて。
「……それでも、好き」
「ありがとう…ヒョンジナ」
コレがハッピーエンドなんて思ってない。
きっと、いつかAは離れてしまう。
けど、それでも…今はそれで良かった。
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作者名：山田 | 作成日時：2023年2月7日 0時
