悩む人魚 2 ページ6
「……」
「うわ、怖。そんな顔でこっち見るなよ」
「……はぁ、すみません」
「男の嫉妬は見苦しいぞ」
ジャミルさんは知ってか知らずかそう言って前を向いた。
そんな事嫌でも理解している。
何度フロイド達に言われた事か。
Aの中で特別な人は居ない。
でも、Aの認める人はいる。
ラギーさんは特別でないにしろAが唯一認めてる人の1人だ。
いや、もしかするとラギーさんしか認めていないかもしれない。
これが僕の越えれない……越えようとも思えない壁。
あの頬の赤らみ…Aはラギーさんに好意があるんだろうか?
いくら認めているからと、幼馴染だからといってあんなにAにベタベタできるのはラギーさんくらいだろう。
ラギーさんにとっては幼馴染でもAにとっては…なんて場合もあるのか。
盲点だった。
Aに関われば基本的に皆、特別を狙っているからその場合を考えていなかった。
「はぁああ…」
僕としたことが…。
Aは“特別”を作らないんじゃない。
つくりたいのにつくれないんだ。
ラギーさんがAの事をただの幼馴染としか見ていないから。
だから、今までそういった連中からは断り続けているのか。
それなら、ラギーさんがもし……Aに好意を持ったら?
特別になりたいと思ったら……Aはラギーさんのものに?
黒い感情がまた出てくる。
どろりとした、吐きそうな感情。
「……っ」
『?アズール?』
そんなの嫌だ。
そんなの絶対に、絶対に嫌だ。
僕はAが居ないと、Aが居ないとダメなのに。
グルグルと回る思考に頭を抱えた。
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作者名:消毒液 | 作成日時:2020年8月4日 7時