悩む人魚 ページ5
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「どーん！……しししっ！！驚いた？」
『はぁ…当たり前…ラギーが勢いよく抱きつくからペンのインク飛んだじゃん！』
現在、魔法薬学が始まる前の休憩時間だ。
僕の目の前でAに抱きつくラギーさんの姿があった。
数十分前、僕が教室に入ってきた時には既にAは居た。
Aの横に座りたくて近寄ってみれば、ラギーと名前の入ったノート達が横に置かれているのが見えた。
それでも問答無用で座ってやろうかと思ったのにAが…
『アズール、ごめん！今日ラギーに教えてあげなきゃいけない授業だから』
なんて言ってきた。
Aからのお願いなら仕方ない、と割り切ってわざわざ後ろに座ったのに今の現状はなんなんだ？
教室の扉から走ってきたラギーさんがAに突撃するように抱きついている。
僕の中で嫌な予感が頭をよぎる。
勘違いだと思いたいが、今抱きつかれてるAの頬が少し赤くなっていた。
本当に勘違いだと思いたい。
ラギーさんは気づいてないのかベタベタとAの身体を触っていた。
「Aちゃんと食ってんの？！まぁた痩せた気がする」
『そうかな〜？大丈夫だろ』
「はぁ…ちょっと目を離すと飯食わないからなぁAは！」
『レオナさんもそんなに食べてないじゃん』
「あぁレオナさんはいいのいいの。ずーっと寝てんだから。で、も！お前は食わなさすぎ！」
『はいはい。オレのママは怖い怖い』
「誰がママだ！産んだ覚えねえ！」
ホント、辞めてくれますかね？？？
Aと誰かが僕以外で楽しそうに話してるのなんて本来聞きたくもない。
それなのに目の前でベタベタ、ベタベタ、ベタベタと。
「……ｯﾁ」
「怖」
無意識で出た舌打ちに隣に座ってきたジャミルさんが反応する。
視線だけ向ければ頬杖をつきながら気だるげに僕を見ていた。
「……あんた、顔ヤバいぞ」
「それはどうも、ご忠告ありがとうございます」
僕だって分かっている。
今どんな顔つきで目の前の二人を見ているかなんて。
正直、この2人の関係性にまで苛立ちが増してくる程には冷静が欠けている。
「アイツらホントに仲良いな」
アイツら、と言われたのは間違いなく僕らの目の前に座っている2人の事だろう。
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作者名：消毒液 | 作成日時：2020年8月4日 7時
