101話「声が、聴きたかった」 ページ14
ようやく心も落ち着き、私はタクシーで帰ることにした。
「ほんとにありがとうございました」
そ「帰ったら1人になるけど、平気?」
「はい。もう大丈夫だと思います」
あの夕立は、いつから止んだんだろう。
下まで見送りをしてくれたそらるさんから、タクシーに乗り込む直前に大きな荷物を受け取った。中身は私の濡れた服だ。
「スウェット、また返しにきますね」
そ「うん。そん時は天月と一緒に来いよ」
その言葉は、私が天月くんとまだ一緒にいられる、そう言ってくれてるように聞こえて、少し嬉しかった。
時刻は0時前。
寝支度を整え天月くんの帰りを待っているとき、どうしても気になってネットで検索をかけてしまった。
案の定、そこには噂が立っていて。
"お姉ちゃんという可能性は?"
"絶対彼女!"
"ショックだね"
……どうしよう。
きっと気にしないようにしてくれるファンの人たちもいたんだろうけど、今の私にはマイナスの言葉しか目につかなかった。
♪〜
すると、検索画面が急に着信画面へ変わる。
天月くんだ。
「……もしもしっ」
天『あっ、A!大丈夫?今どこ?』
その声は、ひどく私を心配しているようだった。
「家に、いるよ」
天『よかった。なんか一部の人からリプライで気になる内容が送られて来ててさ』
もしかして。
「それって、どんな」
天『天月くん彼女いるって本当ですかー?って』
やっぱりそうだ。
天『あと、そらるさんから"今日は早く家に帰って"って連絡がきた』
そらるさん。
どこまでも気を回せるお兄さんだな。
そして、それを聞いて心配してくれた天月くんも、本当に優しい人だ。
天『理由までは聞いてないけど、俺も察しは悪くない方の人間だからさ』
「う、ん」
天『Aの声が、聴きたかった』
そう言ったけど、ほんとは私が天月くんの声を聴きたがってるって、わかって電話してくれたんじゃないかな。
そんなことを思ってしまう程、この電話のタイミングが良すぎた。
「天月、くんっ……」
天『あれっ声震えてる…?』
「早く…早く帰ってきて」
疲れてるだろう彼にこういうことを言うのはよくない、そう分かっているのに。
「私、怖くてっ……」
天『…なんか、あったんだね。すぐ帰る。今タクシー乗ってるから。玄関の鍵、ちゃんと閉めて待っててね』
「う、ん」
天『家着くまでこのまま電話してよっか』
天月くんの優しい声が…愛しくて、恋しい。
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れもん - 待って。この小説、めっちゃ面白かったです!!きゅんきゅん要素がわし好みにピッタリなんですよ!!神小説を書いて下さりありがとうございます!! (2020年4月9日 0時) (レス) id: 2f3420d886 (このIDを非表示/違反報告)
櫟丸。(プロフ) - 今まで読んできた中で一番です!何気にリアリティがあって、でも少しふわふわした夢のようなところもあったり。サイコーです!またこんなのを読みたいです! (2019年1月12日 7時) (レス) id: b67e91f69f (このIDを非表示/違反報告)
私 - 今までに無いほどめっちゃキュンキュンして、感動出来て、素晴らしい作品をありがとうございました。キュンキュンがヤバイです! (2018年7月17日 19時) (レス) id: 801da972da (このIDを非表示/違反報告)
優剣 - Camelliaさん» 最後までコメントずっとくださってありがとうございました…!そんな泣いてくださるほど読み入れてくださってすごく幸せです、ありがとうございます!!他の作品もですか!嬉しいですありがとうございます…!最後までお付き合いいただきこちらこそありがとうござ文字数 (2016年8月26日 1時) (レス) id: 798d17bde1 (このIDを非表示/違反報告)
優剣 - あいりんさん» はい!ありがとうございます!! (2016年8月26日 1時) (レス) id: 798d17bde1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:優剣 | 作成日時:2016年2月26日 12時