90話「あの人もイエローカード」 ページ1
翌日の朝。
目を覚ませば、ベッドのそばに出かける準備を整えた天月くんが座っていた。
「ん…天月くん…」
天「おはよう、A。体調はどう?」
私が身体を起こす前に彼が近づいてきて、手がおでこにあてられる。
天「…まだ熱あるなぁ」
「でも昨日の夜看病してもらったおかげで、少し楽になったよ」
天「俺はそんなたいしたことしてないよっ。したい気持ちは山々だけどね」
天月くんはそう言うけど、私が寝るまでずっとそばにいてくれた。
それだけで十分なんだよ。
天「今日終わったら飛んで帰ってくるから!」
「そんな!大丈夫だよ」
天「いやいや、まじで。コナンくんのスケボ借りれるもんなら借りて帰ってきたいくらい」
「なにそれっ」
真面目な顔でそんなこと言うもんだから、私は思わず笑った。
あっ、昨日言ってた、ある人って誰なんだろう。
「そういえば今日、誰か来るって言ってたっけ?」
天「うん。歌詞太郎さん」
「歌詞太郎さん…!?」
天「俺の家でいくらでも作曲していいから、俺が帰るまでAのそばにいて欲しいって頼んだ」
予想外のことにびっくりした。
天月くんの優しさは嬉しいけど、歌詞太郎さんに風邪でも移したら…。
天「いや、出来るなら母さんに頼みたかったんだけど用事あるって言うから…一番信頼できる人に。いや、正直あの人もイエローカードみたいなとこあるんだけど」
「イエローカード…?」
天「あー、気にしないで!とにかく早く帰ってくるから!」
彼は誤魔化すように笑うと、少し声を張った。
と思えば、
天「…っ………じゃあ、行ってきます」
急に真剣な顔に戻り、軽く触れるくらいのキスをした。
それから30分後。
玄関の鍵が開けられる音がした。
伊「お邪魔しまーす!」
その声の主はすぐに私のいる部屋をノックした。
"どうぞ"と声をかけると、遠慮気味にドアが開かれる。
伊「どうも、お久しぶりです。大丈夫ですか?」
「あっ、はい。今日はありがとうございます」
伊「あぁいいよ!身体起こさなくて、うん」
私が身体を起こそうとすれば、焦ったように敬語を崩し、手を前に出した歌詞太郎さん。
その肩にはギターがかかっている。
伊「リビングをお借りさせてもらうんで、何かあったら呼んでください!すぐ駆けつけますから」
再びお礼を伝えれば"困った時はお互い様だよっ"と優しく笑って返してくれた。
天月くんが帰ってくるまで、あと5時間。
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れもん - 待って。この小説、めっちゃ面白かったです!!きゅんきゅん要素がわし好みにピッタリなんですよ!!神小説を書いて下さりありがとうございます!! (2020年4月9日 0時) (レス) id: 2f3420d886 (このIDを非表示/違反報告)
櫟丸。(プロフ) - 今まで読んできた中で一番です!何気にリアリティがあって、でも少しふわふわした夢のようなところもあったり。サイコーです!またこんなのを読みたいです! (2019年1月12日 7時) (レス) id: b67e91f69f (このIDを非表示/違反報告)
私 - 今までに無いほどめっちゃキュンキュンして、感動出来て、素晴らしい作品をありがとうございました。キュンキュンがヤバイです! (2018年7月17日 19時) (レス) id: 801da972da (このIDを非表示/違反報告)
優剣 - Camelliaさん» 最後までコメントずっとくださってありがとうございました…!そんな泣いてくださるほど読み入れてくださってすごく幸せです、ありがとうございます!!他の作品もですか!嬉しいですありがとうございます…!最後までお付き合いいただきこちらこそありがとうござ文字数 (2016年8月26日 1時) (レス) id: 798d17bde1 (このIDを非表示/違反報告)
優剣 - あいりんさん» はい!ありがとうございます!! (2016年8月26日 1時) (レス) id: 798d17bde1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:優剣 | 作成日時:2016年2月26日 12時