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「もうこんな時間なんだね」
射的の出し物をやっている教室を外から眺め、時計を何気なく見ると時刻は4時40分あたりを指していた。学園祭の終了時刻は5時。人の往来も若干少なくなってきており、先程より歩きやすいが少し物寂しい。
あ、景品のぬいぐるみ可愛い、なんて思いながらそう呟くと、隣の黄瀬くんは「早いッスねー」と少し間延びした口調でそう言う。
「おばけ屋敷の後、Aちゃんダウンしてる時間長かったッスもんね」
「だって怖かったんだもん」
ため息混じりにそう文句に近い言葉を言えば、横から「ごめんって」と半笑いで帰って来る。
「あ、Aちゃん。俺トイレ行って来るんで2階の自販機の前で待っててもらって良いッスか？」
「わかった。それ持ってよっか？」
黄瀬くんが輪投げや体力テストなどで獲得したそこそこの量の景品を指差して言えば、「大丈夫ッスよ」とにこやかに返ってくる。
彼の他人の技術の模倣能力というのは、こういった遊びにも活用される様で「俺こういうの見たらすぐ出来るようになっちゃうんスよね」なんて、少しため息混じりに言っていた。
一見嫌味に聞こえなくもないが、彼もそれなりにすぐ出来るようになってしまう自分の能力に辟易してるんだろうな、なんて思う。
そのまま黄瀬くんと別れ、自販機の前のテーブルと椅子が数セット用意されている休憩ブースへと歩みを進める。
何だか、年甲斐もなく楽しんでしまった。
少し前までの自分自身を思い返して少し恥ずかしくなる。文字通り童心に帰った心地ではしゃいでしまったが、まあ今日くらいは良いだろう。てか私そもそもガワは中学生だし。
さっきも飲んだな、と思いながら緑茶のボタンを押して、誰もいない休憩ブースに一人腰掛けた。
明日振替休日でよかったー、なんて伸びをしながらポケットのケータイを取り出したタイミングで、「お待たせッス」と軽快な声が頭上から聞こえる。
「あ、来た」と声を掛けるよりも前に黄瀬くんから「はい」とある物を差し出される。
「……さっきの景品」
「結構見てたから欲しいのかなって思って。今日のお礼と、あとおばけ屋敷連れて行ったお詫びも兼ねてッス」
「えー、嬉しい。ありがとう」
思わず綻ぶ頬をそのままにぬいぐるみを受け取る。目の前に座った黄瀬くんが目を細めたタイミングで、学園祭の終了を知らせるチャイムが鳴り響いた。
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牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (
レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです！！これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：牛タン | 作成日時：2024年2月27日 9時
