44 ページ45
決して忘れていたわけではない。ただ少し慣れは生まれてきていた様に思う。
私の隣を歩くこの黄瀬涼太という人物は、芸能人にも引けを取らないほど容姿が整っている上に高身長。ついでに言うと彼曰く地毛だというその金髪や黄金色の瞳も相まり、あまりにも目立つ。
思えば黄瀬くんを初めて見た入学式の日、私は彼のえげつない顔面偏差値に戦慄したものだ。
美人は3日で飽きるなんて超絶大嘘。正しく言えば、「美人が３日間近くにいると人間が本能的に持つ環境適応能力が美人が近くにいる状況に慣れさせる」だ。あと別に飽きない。
そんな戦慄するレベルの美男子、不特定多数の人間が出入りする学園祭の中に野良で歩いていたら否応なく注目を集めることなんて簡単に予想が付くことだ。
まあ予想が付いていないから、現に私は道ですれ違う人々(主に女性)に氷の様な冷たい視線を向けられているのだが。
当の黄瀬くんはこんな視線には慣れているのか、怖いよ〜逃げたいよ〜、と内心泣き喚いている私とは対照的に素知らぬ風で「学食席空いてるッスかね〜」なんて呑気に宣っている。
「あ、空いてるといいよねー」と若干上の空で返答しながら、自分の今後の花の学園生活の行末を案じていると、不意に偶然すれ違った人と肩がぶつかり思わずよろけてしまった。
「おっと……。大丈夫ッスか？」
「あ、うん、モーマンタイ……」
瞬間、隣の黄瀬くんに腕を軽く引かれ何とか転ばずに済み、「ありがと」とホッと息を吐く。
もう踏んだり蹴ったりだ。正直帰りたい。何故だか脳裏に浮かぶ自室のベッドに思いを馳せていると、先程私の腕を引いた黄瀬くんの右手がさりげなく私の背中に置いてある事に気がつく。
「もう別にコケないから良いよ」
「え？」
「いや、手。気遣いありがと」
そう素直に感謝を述べると、黄瀬くんは不意に私に耳打ちをする様に身体を傾けた。
「意外とこうしてた方が女の子達の視線って和らぐんスよ」
「あ、そうなの……？」
本当にそうか？ 何言ってんだ？ 悪化するだろと一瞬思ったが意外と黄瀬くんの言う通りで、女の子達は途端に見てはいけないもののように視線をこちらに向けなくなった。
なんか電車とかでイチャイチャしてるカップルとかいると何故か視線を逸らしてしまうあれかな。それはそれでなんかちょっと複雑かも。
そこまで考えていたところで、ふとある事を思い出し私は慌てて口を開いた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (
レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです！！これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：牛タン | 作成日時：2024年2月27日 9時
