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「それで？ トイレ行く〜と去って1人になった隙に逆ナンした男とアドレス交換して今日会いに行くってこと？」
「全然違うから」
ニヤニヤといやらしい笑みを浮かべそう言う友人にピシャリと冷たく言う。
ゴールデンウィーク明けの最初の平日。久々の授業ということもありいつも以上に疲れを感じる帰りのホームルーム前、私は先日遊びに行った女の子達数人に席の周りを囲まれる形で質問攻めにされていた。
「たまたま迷子の子見つけて迷子センターに連れてったらそのお兄さんにお礼したいって言われて、今日なんかお礼してもらうだけだって」
「なるほど、逆ナンじゃなくてナンパだったか」
「何でそうなるの」
呆れた様な声色でそういう私には目もくれず、友人達はお互いではしゃぎ合っている。一応当事者なのに蚊帳の外だ。何となく助けが欲しくて隣の黄瀬くんの方を見ると、こんな時に限って突っ伏して寝ている。
「えー、普通迷子の妹助けてくれたって言っても赤の他人に後日わざわざお礼とかしなくない？ 絶対なんかあるって」
「いやぁ〜、そういうのじゃないと思うけどなぁ」
友人の言いたい意味はわかるが、漫画の中の住人だった人間に自分がその手の感情を向けられているとはどうしても思えず、どうしても否定的なニュアンスを言葉に込めてしまう。
「あたしもヒロインメイクのマスカラ買おっかなぁ」と友人が冗談めかして言うのと同時に、ガラリとドアが開き教室に担任が入ってくる。
「じゃあ絶対明日結果聞かせてよ！」と言い残すと、友人達は蜘蛛の子を散らすように各々の席に戻って行った。
「他校の男子と会うんスか？ 今日」
「……聞いてたんだ」
隣を見るとさっきまで突っ伏して寝ていたはずの黄瀬くんがいつのまにか起き上がり、頬杖を突いてこちらを見ていた。
先程の友人達に少し似た種類の笑みを口元に浮かべながら、目はあまり面白くなさそうに気怠けに私を映している。少し不思議な表情だ。
そんな表情でもなんか様になってかっこよくていいなぁ、と思いながら、「あの、そういうんじゃないからね。本当に」と念押しする様に言う。
「ふーん」
面白いんだか、そうではないんだかわからない様なトーンで口の中で転がす様にそう相槌を打ち、黄瀬くんは前を向いてしまう。
いつもの軽快で溌剌とした印象を受ける話し口とは違う、彼の煮え切らない様な声色に私は首を傾げつつ前に向き直った。
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牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (
レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです！！これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：牛タン | 作成日時：2024年2月27日 9時
