12 ページ13
図書委員の仕事は一言で言えば、座っていればそれでいい。
隔週で一回、放課後に貸し出しカウンターに委員2人で座り貸出または返却の手続きを行う。学期初めだと、入荷したてホヤホヤの新刊に学校図書の印をひたすら捺印していく作業もあると最初のオリエンテーションでは説明があったがそれもまあ先の話。とりあえず2週間に一回だけホームルームが終わる16:30から図書室の閉館時刻の18:00の間、ぼーっと座っていれば良いらしい。
適当に選んだにしてはまあまあ当たりだった委員会に満足しつつ、私にとってはもう一つ嬉しい誤算があった。
同じ委員会に所属していた、黒子テツヤの存在である。
委員会の仕事が本格的に始まる前のオリエンテーションで、隣の席にたまたま彼が座った時、私は2度驚いた。
1回目は知らない間に隣に人が座っていた事。そして2回目はその座った人間はこの世界の主人公である事だ。
漫画でも何度も言及されていたが、実際に対峙する黒子くんは本当に存在感が希薄だった。
まばたきをしたら、その瞬間にその場から忽然と消えてしまいそうなほどに。目を凝らしていなければすぐに見失ってしまいそうな彼を、横目で凝視しながら私は考えていた。
めっっっっちゃ仲良くなりたい。と。
確かに驚くほどの存在感のなさだが、彼はあの人気少年誌である週刊少年ジャンプの人気漫画の主人公をしていた人物。つまりは有名人である。
そしてその人気漫画の主人公が、今私の目の前に対話が出来る1人の人間として存在しているのである。
黒子くんに限らず、前世では漫画の住人であった人間とコミュニケーションを取り仲良くなる、というのは、この世界で私だけに与えられた特権だと思う。記憶が蘇ってからというものの、何度自分の前世の徳への感謝をしたかわからない。
別に親友になりたいとは言わないから、廊下ですれ違った時とかに「ウィ〜(謎のハンドサイン)」みたいなことをサラッと出来る間柄になりたい。あわよくば卒業式の日にあのよくグッズとかでやってたグーパンポーズを2人でして写真撮って欲しい。
お近付きになる為にもこの委員会というチャンスを逃す手はない。
迷いなく筆を進める黒子くんの希望曜日を記入する用紙を、私はそっと盗み見た。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 63人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
牛タン(プロフ) - アンパンさん» コメントをいただきありがとうございます。そう言っていただき光栄です。度々話のキリが悪い更新の仕方ですが、温かく見守っていただけますと幸いです🙇 (3月1日 23時) (
レス) id: 68be7e4af6 (このIDを非表示/違反報告)
アンパン - めっちゃ文章が好きです！！これからも更新楽しみに待ってます (3月1日 15時) (レス) @page20 id: 2d65495c60 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：牛タン | 作成日時：2024年2月27日 9時
