ビタースウィート・ルーム【Kazunari.N】 (ページ15)

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“またね”

朝聞いたあの言葉が、まさかこんなにも早くやって来るなんて、誰も予期できなかったに違いない。

脳裏に張り付いた甘ったるいあの声が離れない二日酔いの頭は、一層クラクラさを増した。

やっぱり櫻井くんの誘い、断ってればよかった・・・

ゆっくり今日は自分のベッドでお休みするべきだった・・・

「和也一人で飲んでたの？」

「うん、まあ。翔さんたちは？」

「俺らは仕事帰りに」

「会社の同僚？」

「ああ、うん。Aさんは俺の先輩」

「へえ、そうなんだ」

櫻井くんとの会話の最中で、チラチラと私の方に視線を向けるお隣さんは

大して酔ってないくせに、何故かやけに甘ったるい顔をしていた。

「Aさん、和也邪魔でしたか？」

隣に座る櫻井くんが、さっきから黙ったままパスタを食べている私を気にしてか心配そうな顔して窺う。

「ちょっと翔さんやめてよ。ね？俺邪魔じゃないよねAさん？」

ホントは心地悪い。なんだか気まずい。

だけど私にそう言わせないようにと、お隣さんは「ね？」と目配せする。

何考えてるのか、全然分かんない。全然掴めない。

だから

「・・・うん、邪魔じゃない」

そう言ってしまったのは、多分このお隣さんのせいだ。

心地良いわけない。だけど言えなかった。

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