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二日酔いの身体は正直キツいし、失恋の傷心も簡単には癒えない。
今日はゆっくり家でお休みしようと思っていたから、本当は断ろうと思った。
だけど、“美味しいお店”
櫻井くんの言葉に見事に釣られ、気が付いたときには「うん」と頷いてしまっていた。
美味しいご飯が、食べたかった。
少しでも苦い想いを忘れられると思って。
櫻井くんが連れて行ってくれるお店は、どこも絶品で、おまけにオシャレ。
先輩の私をこんなにオシャレなところに連れて行ってくれるんだから
櫻井くんの彼女はもっとオシャレなお店に連れて行ってもらってるんだろうな、と思いながら薄暗い道を歩く。
「あ！ココです！着きました」
会社から出て、電車で二駅。そこから少し歩いたところにあったお店。
いつものように、ココもすごくオシャレ。
「二名です」
店の中に入ると、櫻井くんのリードで、私たちは店員さんに案内してもらった席へと向かう。
その途中
ここはバーカウンターもあるんだぁ…オシャレ！
とちょっとウキウキしていたときに、見つけた一人のスーツ姿の男の人に、私は吸い付けられるように目を奪われた。
「・・・あれ？和也じゃん」
一歩前を歩く櫻井くんも、私と同じ方向を向いていることに気付いたのは
聞き慣れない単語を発したその声。
“和也”と呼んだ櫻井くんの声で、バーカウンターに頬杖を突き、左手でグラスを持つ一人の男の人が、こちらにゆっくりと振り向いた。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2017年12月22日 18時
