ビタースウィート・ルーム【Kazunari.N】 (ページ5)

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背中に回った腕がスルッと抜け、私はフラつく身体を何とかその場に立たせるのに必死だった。

「酒、飲み過ぎ」

「へっ？」

「匂いで酔いそうなくらい」

甘い顔をしているのに、苦い声色。

その二面性にさっきから気が狂いそうになる。

お酒の匂いがぶわっと広がって、また気が狂いそうになる。

その顔に、思わず酔いそうになる。

「すみません…あの、ありがとうございました」

私は気が狂った頭をどうにかして元に戻し、お隣さんに向かってペコリ、とお礼の意を込めて頭を下げた。

「別れて正解だと俺は思うけど」

「へ？…えっ？」

「その男、だらしなかったでしょ？」

俯かせた顔をパッと上げると、お隣さんは私の心情を見透かしたように

な？そうでしょ？と言う目で、少し薄気味悪く笑う。

「それは・・・」

図星過ぎて何も言えない。というか何も言い返す言葉が見つからないのが悔しい・・・

というか、どうして彼がそのことを知っているのか疑問に思う。

「まあ、失恋の悲しみに変わりはないのか」

「・・・うっ」

「とりあえず中入らない？」

相変わらず苦い声色の彼は、澄ました顔して私の心を見透かした。

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