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いつもと違うシャンプーの匂いに、心がどこか落ち着かない。
風が吹いて和也くんの髪がサラッと揺れると、私と同じ匂いが仄かに香る。
後ずさりした気持ちをしれっと無視したことを
私のせいじゃない
もう一度そう強く思いながら、冷たい風に肩を竦めた。
「美味しいお店知ってるんですか？」
「バカにしてる？」
「してないです」
「これでも俺美食家だよ？」
「嘘ですよね？」
「うん、ウソ(笑)」
櫻井くんが連れてってくれた美味しいお店に和也くんもいたから、ホントに美食家なのかなってちょっと信じてみたり。
だけどやっぱり半分は疑ったり。
バーカウンターで、グラスを傾けた和也くんの姿をふと思い出しながら、寒空の下をただ歩いた。
「俺らもうただの隣人じゃないね」
「それどういう意味ですか？」
「だって一線越えちゃったじゃん」
「越えてません！ただ同じベッドにいただけです！」
「そんなムキになんないで？Aさん(笑)」
ふわっと冷たい風に乗って香る同じ匂いと、冷たいような甘いような顔して私を見つめる色素の薄いその瞳。
何にも知らないのに、彼は私を何でも知ってるような目で笑う。
全てを見透かしたようなその瞳に、ほんのちょっと湧き出た気持ち。
私が、わたしじゃないみたいに、あなたのことが気になったのは、もう少しあと。
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作者名：妃紀
| 作成日時：2017年12月22日 18時
