５０：距離 〜N〜 ページ10
俺が自分のプライドを捨ててまで必死になって『会いたい』と言ったのは、大前提にただ俺が会いたいっていうのもあったけど…
休みにひとりでいると、Aが寂しい思いすんじゃねぇかって…
また…ひとりで泣いてるんじゃないかって…
そんな思いさせたくなかったってのもある。
てか…Aに会えんだったら、俺の小せぇプライドなんていくらでも捨ててやる。
『会社では絶対話しかけないで！』
土日に会う条件としてそれを言われて。
理由を聞くと、前の会社での出来事やニノちゃんがうちの３トップの最後の残りだからと…。
女の嫉妬ほど厄介で怖いモンはねぇからなって納得した。
何よりAが悲しんだり傷つくのは見たくなし、元々会社ではうちの課と経理課は繋がりが薄いから会う事もない。
「どうだね？片思いの感想は。」
先輩ヅラしてタバコを咥え、俺の肩を叩く元祖片思いヘタレ。
「ん〜…切ないですけどね…悪くはないです。」
「付き合えそ？」
タバコをやめて口が寂しいのか飴を口の中で転がしながらコーヒーを口につけてる新米パパ。
おい…その飲み方…
それでいいのかよ…。
「どうでしょうね…。ちょっとずつ距離は縮まってると…思いたいですけどね…。」
最初の頃より笑ってくれる様になったし、身構えなくなった。
手を繋いでもいちいち反応する事もないし、『嫌だ』とも言わない。
相変わらず『二宮和也』呼びだけど…。
「全てが初めてなんで、これでいいのかって迷う時はありますね…正直。」
今、こうしていいのか？
間違ってないか？
Aはどう思ってる？
…なんかは日常茶飯事。
「例えば？」
「LINEでやり取りしてると声聞きたくなって…結局、毎日電話しちゃうトコとか？」
Aにも都合があるだろうし、電話はよっぽどじゃない限り控えようって思ってるんだけど…
「ほぇ〜…あのニノが…。オイラびっくりだよ。」
「俺、今なら翔さんの気持ち全部わかりますよ。そこまでヘタレじゃないっすけど。」
「おい！俺もそこまで『うん。翔くんはひどかったね』」
サラッとそう言ったおっさんを唖然と見る。
「こんなに長い間禁欲するとか、前は絶対考えられなかったけど…。」
『けど？』
ハモってるし…。
「俺の事を好きなAを…Aだけを抱きたい。他はいらない。」
『トオル』じゃなくて…
俺を思ってくれてるAを抱きたいんだ。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2014年2月20日 6時
