４８：過去形 ページ8
「…好きなんじゃん？」
フラペチーノをスプーンで掬いながら、他人事の様にあっけらかんと言った亜美。
「…そ、それはない！絶対ない！」
そうよ…だってまだ徹が…。
「だからさ？そうやって自分の気持ちを誤魔化す為に『まだ徹が好き』って思い込もうとしてんじゃないの？って事。」
咥えてたスプーンで私を指して…。
サービス業の亜美と、久々に休みが合って会う事になり、徹の結婚式からの一連の流れを簡単に説明した。
あの日の真剣過ぎる二宮和也の気持ちを受け入れて以来、土日のどちらかには必ず会うのが決まり事になっていて。
彼も彼で草野球の練習や試合があったりして、土日はそこそこ忙しいらしい。
あの遊び人が野球なんてスポーツをする事実に驚いたっけ。
『今度さ？試合見に来てよ。Aが見てくれたらいつも以上に活躍する事間違いナシ！』
って屈託のないあどけなさが残る笑顔で言った。
「なに笑ってんのよ…。」
「え？笑ってた？」
「そんなさ？『恋してます〜』みたいな顔で思い出し笑いするくらいだったら付き合っちゃえばいいのに…。」
『あ〜もう吸おう』スプーンで食べるのが面倒になったのかストローで吸う。
「…だって…さ？」
「うん？」
「亜美は知らないけど、本当の本当にかなりの遊び人だった人だよ？」
「うん…それで？」
「『それで？』って…。」
今はただの気まぐれかもしれない…。
結婚を焦る歳でもないけど、付き合う期間とか考えたら…
もし、彼ができるとして…
ちゃんとそこまで考えられる人がいい。
浮気されて『やっぱり遊びたくなっちゃった』って軽いノリで言われる事にでもなったら、今度こそ立ち直れない…。
「あんた今さ？『遊び人だった』って過去系で言ったでしょ？って事はもうその…二宮和也さんの事信じてるって事なんじゃないの？」
「…そんな事…。」
「あんだけ好きだった徹さんの事…そんなに引きずらなかったのも彼のお陰なんじゃない？」
「……。」
「それと…無理せず自然体でいられるって…彼に求める第一条件だと思うけど？」
確かに、私は徹に嫌われたくないとか…
こうしたら徹は嫌なんじゃないか…
そんな事ばっかり考えて、自分を偽ってた部分がある。
「手を繋いで毎週デートしてる時点で決まってるようもんじゃない？」
「…そう？」
「あんたは本当に嫌で迷惑ならどんな手を使ってでも会わない…そういうタイプでしょうよ。」
…そうだけど…。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2014年2月20日 6時
