７４：頑張る番 ページ34
『そのままのAちゃんで…』
そのままの私？
って…どんな私？
本当なら今頃は二宮和也と会っていた週末に、ろくにご飯も食べずに考えて。
「亜美？『そのままの私』ってどんな私？」
答えがわからなくて亜美に電話してみたり…。
ー偽ってないあんたって事じゃない？
私が真剣だったらから、亜美も真剣に返してくれて。
徹の事も二宮和也の事も話すと…
ーだから言ったでしょ？あんたは彼が好きだって。素直にならないから…。
「うん…後悔と反省してます。」
ー今度はあんたが頑張る番なんじゃないの？
「…うん…。」
ーA？
「ん？」
ーたまには誰かに甘えるのもいいんじゃない？
そのくらい受け止められる男でしょ？
「うん。」
ー難しい事考えないで、素直に感情のまま行動するのも必要よ。
普段は毒舌亜美が優しく諭す様に言って。
「うん。ありがとう。」
そう言って亜美と電話を切って…
そのまま二宮和也の番号を表示させるけど…
着信拒否されてたらと怖くて通話を押せない。
そのうちに画面は暗くなって…。
携帯を握ったままため息を吐いて項垂れるしかなくて…。
『今度はあんたが頑張る番』
そう…だよね…。
もし、もう二宮和也が私の事を嫌いになってたとしても、やっぱり気持ちだけは伝えないと。
彼も…私も前に進めない気がする。
立ち上がりバスルームに向かった。
・・・一番お気に入りのワンピースを着て、念入りに髪を巻いて、メイクも念入り。
『今から行くね？』
それだけLINEをして家を出た。
けど、やっぱり臆病な私は既読になるのは怖くて見れなかった。
コツコツとヒールが鳴り響く通路には残り少ない夏を惜しむ様に鳴くセミの鳴き声も聞こえて。
震える手でインターホンを押す。
ドアを避ける様に移動するけど、家主は現れてくれず…。
やっぱ…愛想尽かされちゃったかな？
野球かもしれないし、買い物かもしれない。
けど、こういう時って悪い方向にしか考えが向かなくて。
ドアに背を預けて俯きため息を吐いた。
足音がする度に顔を上げるけど、私が会いたい人じゃなくて…。
住人も怪訝そうにドアの前に座り込む私を見てる。
ははは…そうだよね？こんな何時間も…。
不審者で通報されるかな？
９月に入ってめっきり日も短くなって、風にも少し秋を感じる。
コツコツと足音がしたけど、額を膝につけたまま初秋の夜風を感じていた。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2014年2月20日 6時
