７２：そのまま、ありのまま ページ32
二宮和也が私のたった二文字の一言を待ってたのを、私はずっと気づいてた。
気づいてて、思われてる事に安心して…
その上に胡座をかいてた。
思えば初恋から、追っかけてばっかりだった私は、初めてこんなに男の人に追っかけてもらって…好かれて…。
自分が頑張らなくてもいい関係甘えてた…。
目が合った二宮和也の目は泣きそうで…
けど…納得した様な目で…身を翻した。
「徹…帰って。あなたには守るべき人が二人もいるじゃない。」
そう…あなたは私を好きじゃない。
ただ、私が自分の思い通りになる女で…
そして…私が他の人のモノになるのが面白くないだけ。
子供が自分の使ってないおもちゃでも貸すのが惜しいって駄々こねてるのと同じ。
「…どうしてもダメか？」
「不倫を当たり前の様に強要する人の所に行けるわけなでしょ？それに…私はあなたじゃない人が好きなの。」
「…そうか…わかった…。」
「千里とも…もう友達とは思えない。だから、あなた達夫婦と関わりたくない。」
キッパリハッキリ言った私に『ごめん』と言って背中を向けた。
エレベーターに乗るのを見送って、部屋に入ると携帯を取り出した。
伝えないと…
ちゃんと伝えないと…
大事な人を失う事になる。
けど…かけた電話は繋がらなくて…
絶望の中…コトンと携帯が床に落っこちた。
いっつもそう。
失って初めて気づくの…。
あんなに大事にしてくれてたのに…
私が弱くて一歩踏み出せなかったから…。
『俺は好きだよ？』って一方通行に言ってた二宮和也は、どんな気持ちだったんだろ？
どんだけ私からの『好き』を待ってたんだろ？
あの時…『うん』じゃなくて、『好き』って言えてたら変わってた？
今頃、冗談言い合ってた？
膝を抱えて泣くしかできない私の携帯のLINEの通話の通知音が部屋に鳴り響く。
…相葉…さん？
「……ぃ。」
ーあ…Aちゃん？ごめんね？番号知らないからLINEで。
「…いえ。」
ーねぇ…ニノの事…好き…だよね？
「…好きです。」
バカみたい…。
相葉さんに言ったってどうしょもないのに。
ーははは。そっか。んならいいんだ。
「…はぁ。」
ーねぇ…Aちゃん？
「はい？」
ーそのままのAちゃんでありのままのニノを好きでいてあげてね？
「…どういう…？」
「ん？それは自分で考えて？」
『んじゃ、またね？』って笑いながら言った相葉さんは一方的に電話を切った。
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作者名：しおなな
| 作成日時：2014年2月20日 6時
